SDGsウェディングケーキモデルとは何?環境省や国連の取り組みを図解から紐解いてみましょう
SDGsを分かりやすく図解したモデルで、ウェディングケーキを図にしたモデルがあります。
このSDGsウェディングケーキとはどのような意味を示すのでしょうか?
環境省や国連の取り組みを例にしながら、SDGsの理解を深めていきましょう。
もくじ
SDGsとは
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの間に国連加盟193カ国で達成するために掲げた17の大きな目標と、具体的な169のターゲットから構成されています。
SDGs以前は、MDGsと呼ばれる2001年から2015年までの国際目標を掲げられていましたが、開発途上国支援に加え、経済成長、気候変動と、社会や地球規模で取り組む目標がSDGsには盛り込まれています。
2015年9月の国連で、SDGsが採用された際には、国連の壁一面にプロジェクションマッピングを行い、盛大に祝われたほど盛り上がりを見せたのですが、2020年あたりから日本でも本格的に企業もSDGsへの取り組みを打ち出しはじめてきています。
SDGsウェディングケーキモデルを図解
SDGsの理解を深め、個人や企業が積極的に取り組みには、まずどんな目標があり、それぞれの目標に対してのアプローチ(ターゲット)があるのか?を理解する事が重要です。
SDGsをいかに理解し、自社でも取り組みが出来るか?をまとめた資料は各団体からも出ていますが、環境省からも資料提供がありますので参考にして下さい。
環境省提供:すべての企業が持続的に発展するためにー持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイドー
このような資料や図解が数ある中で、SDGsの各目標同士の関係性を掴みやすく立体的にウェディングケーキのようにしたモデルが、今回ご紹介する「SDGsウェディングケーキ」です。
SDGsウェディングケーキとは
SDGsウェディングケーキとは、スウェーデンの首都ストックホルムにあるレジリエンス研究所の所長が考案したSDGsの概念を理解しやすくまとめた構造モデルです。
レジリエンスとは、外的な衝撃にも折れる事なく、立ち直る事ができるしなやかな強さという意味があり、反発性や弾力性を表す言葉で、組織、経済、働き方、人材育成、防災・・など様々な分野で研究が進んでいます。
SDGsウェディングケーキの3階層構造
上記のSDGsウェディングケーキの図の通り、目標17をウェディングケーキの頂点にし、
- 経済圏
- 社会圏
- 生物圏
の3つの階層によって、構成がされています。
下の階層から順を追って確認しますと、1段目の「生物圏」には、
- 目標6.安全な水とトイレを世界中に
- 目標13.気候変動に具体的な対策を
- 目標14.海の豊かさを守ろう
- 目標15.陸の豊かさも守ろう
の4つが含まれていて、人が地球上で暮らしを持続する上で、必要不可欠な「環境面」や「気候変動」について掲げた目標になります。
2段目、3段目にあたる社会圏や経済圏の発展にも、まずは地球そのものの環境が整わない限り、持続的な発展はあり得ません。
すべての発展の土台になる「自然環境」が重要なポイントになる事を、ここで理解しましょう。
次に2段目の「社会圏」には、
- 目標1.貧困をなくそう
- 目標2.飢餓をゼロに
- 目標3.すべての人に健康と福祉を
- 目標4.質の高い教育をみんなに
- 目標5.ジェンダー平等を実現しよう
- 目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 目標8.住み続けられるまちづくりを
- 目標16.平和と公正をすべての人に
と8つの目標が含まれています。
これら8つの目標というのは、人間が不自由なく生活するために、持続的に働き続けられるために必要な「健康面」、「差別や偏見解消」、「教育環境」といった基盤を整える必要がある事を示しています。
そして、3段目の「経済圏」ですが、
- 目標8.働きがいも経済成長も
- 目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10.人や国の不平等をなくそう
- 目標12.つくる責任 つかう責任
と4つの目標が含まれています。
これら4つの目標は「働きがい」、「経済成長」、「技術革新」、「差別や偏見を解消」、「サーキュラー・エコノミー」といった、経済発展に必要な項目となります。
そして、これら3階層の頂点に掲げるのが、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」というもので、国や企業、全世界の人々が手を取り合い、パートナーシップを組み、サスティナブルな社会を創る事をゴールにしているのです。
これら17の目標をSDGsウェディングケーキでモデル化し、図解する事で、よりSDGsに対しての理解が深まるのでは無いでしょうか。
SDGsウェディングケーキを例に国連の取り組みを考えてみる
SDGsウェディングケーキとは何?を理解したところで、SDGsと国連の関連性について、ここから解説を加えていきます。
2015年9月に国連で採択された際に作成された「2030アジェンダ」で、2030年までに達成すべき世界共通の目標が明確になりました。
先に書いたとおり、前身の取り組みであるMDGsでは、
目標 | 成果 |
目標1 極度の貧困と飢餓の撲滅 | 極度の貧困者が約50%減少 |
目標2 普遍的初等教育の達成 | 途上国の初等教育純就学率が11%増加
若者の識字率が8%向上 |
目標3 ジェンダーの平等の推進 | 途上国の3分の2以上で、初等教育の就学率における格差が解消 |
目標4 乳幼児死亡率の削減 | 5歳未満児の年間死亡数が53%減少 |
目標5 妊産婦の健康改善 | 妊産婦の死亡率が45%減少
出産時の医療従事者の立会いが12%増加 |
目標6 疾病の蔓延防止 | HIVの新たな感染が約40%減少 |
目標7 環境の持続可能性の確保 | 安全な飲料水を入手出来る人が15%増加 |
目標8 グローバル・パートナーシップの推進 | インターネットの普及率が約37%増加 |
と一定の成果を挙げた反面、格差が浮き彫りになった事が課題として挙げられるようになりました。
そこで、国連ではSDGsのキーワードともなる「誰一人取り残さない(leave no one behind)」をテーマに掲げ、新たな目標を掲げ推進していく事になったのです。
SDGsの達成度合いをアイコンで表示
国連で採択されて以来、毎年SDGsの達成度合いをダッシュボードや達成度ランキングで公開しています。
日本のSDGs達成度合いですが、2020年のダッシュボードによると、
となっていますが、それぞれのアイコンの色によって、達成度合いが分かるようになっています。
色分けですが、
- 赤は「最大の課題」
- オレンジは「重要課題」
- 黄色は「課題が残っている」
- 緑は「SDGsが達成できている」
事を示していますが、日本では
- 目標4 質の高い教育をみんなに
- 目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標16 平和と公正をすべての人に
のみが、十分な達成という事になり、世界の達成度ランキングを見ると、日本は79.2ポイントで17位という結果となっています。
詳細な結果は、Sustainable Development Report 2020にて確認が出来ますので、参考にして下さい。
SDGsウェディングケーキを例に環境省の考え方を紹介
最後に、SDGsに関して環境省の取り組みやキーワードを紹介していきます。
環境省から資料提供されている「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」では、最新の環境アセスメントや環境研究、技術の推進事例などを読む事が出来ます。
筆者個人としては、身近な事例や検討することができる事例を参考にする事で、SDGsを身近なものとして捉えて、取り組み始める事が出来るのでは無いか?と考えます。
いくつかヒントとなるキーワードを提供すると、
- プラネタリーバウンダリー(地球の限界)
- 昆虫食
- 電気電子機器廃棄物(E-waste)の不適切な処理が引き起こす環境汚染
- 海洋に流出したプラスチックごみ
- 森林面積の減少
- 世界の壁ん地上気温偏差や海面水位の変化
などが挙げられます。
プラネタリーバウンダリー(地球の限界)
2009年に定義された「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」ですが、地球にとって安全域や程度を示す限界値として9つの地球システムを以下の通りまとめています。
- 海洋酸性化
- 気候変動
- 生物多様性の損失
- Biogeochemical (窒素の循環、リンの循環)
- 土地利用変化
- グローバルな淡水利用
- 成層圏オゾン層の破壊
- 大気エアロゾルの負荷
- 化学物質による汚染
これらの9つの領域で、危険領域を超えて、地球のシステム機能を正常に保つ事が限界に達しているものを色分けしています。
中でも、「気候変動」、「生物多様性の損失」、「土地利用変化」、「Biogeochemical (窒素の循環、リンの循環)」がすでに限界を超えていると言われていますので、SDGsウェディングケーキの最下層として優先的に取り組むべき事なのは明白なのです。
昆虫食
人口増加に伴い、食料需要が増加する反面、気候変動への解決策の一つとして期待されているのが、昆虫食です。
日本では江戸時代以降に庶民が昆虫を食べていた事は記録として残っていますし、蜂の子やイナゴなどは、今でも販売されています。
電気電子機器廃棄物(E-waste)の不適切な処理が引き起こす環境汚染
2010年から2015年あたりにかけてのデータになりますが、東アジアおよび東南アジアにおいて、E-wasteが過去5年間で63%もの電気電子機器廃棄物(E-waste)が増加している事が明らかになりました。
水銀や鉛などの有害物質も含まれるため、人体や環境への影響が懸念される一方で、都市鉱山とも言われるよう電気電子機器廃棄物(E-waste)には金、銀、銅、パラジウムなどの高価な金属も含まれているので、違法なリサイクル業者が、電線を野焼きにしたりすると、有害なガスを撒き散らします。
その結果、電気電子機器廃棄物(E-waste)の不適正処理による甲状腺機能異常、肺機能低下、死産、成長障害、精神的疾患、認知発達障害、細胞毒性、遺伝毒性等との関係性も指摘されています。
海洋に流出したプラスチックごみ
今のまま海洋ゴミが増え続けると、2050年には魚より海洋ゴミの量が増えると言われていますが、海洋ゴミの7~8割が街から川や水路に流出し、海へ流れているのが問題になっています。
特に、海洋ゴミでプラスチックごみが占める割合が65%以上、毎年海に流出しているプラスチックごみのうち2万~6万トンは日本で発生したものだと言われています。
プラスチックごみによる影響は、ポリ袋を餌と間違えて食べてしまったり、漁網に絡まったりして傷つき、死んでしまうといった海の生物に対しても甚大な被害が出ています。
さらに、今後もプラスチックごみが増え続ける事で、漁業や観光業、船舶運航の障害、沿岸中域の環境にも悪影響が出ると言われ、試算によれば地球の表面積の7割に被害が出ると言われています。
森林面積の減少
世界の森林面積は約40億haあると言われていますが、世界の陸上面積の3割は森林です。
この森林で生物の8割以上は生息し、また森林がCO2の吸収によって、生物多様性の保全や気候変動の緩和といった環境を提供してくれています。
これらの森林面積が世界では、どんどん減少していっており、野生生物の中でも絶滅種の種類も増加するなど、生態圏の破壊も進んでいる現状です。
世界の地上気温偏差や海面水位の変化
1901年から2010年の110年の間で海面は約19センチメートル上昇している海水面ですが、21世紀中には約82センチ上昇する事が予測されています。
海水面の上昇によって、海抜の低い島国では、畑や井戸に海水が入り込み、作物や飲水の確保が難しくなっているとも言われます。
また、平均海抜が1.5メートルにツバルでは、2002年7月からニュージーランドへの移民計画もあり、環境難民が今後も増える事が懸念されています。
今後も、海水面の上昇が続くと、海岸浸食、高潮・高波・異常潮位などの沿岸災害の激化、沿岸湿地喪失などによる生態系への被害も考えられます。
そのため、対策としては地球温暖化の問題を解決していく事が求められますので、日本だけに限らず、地球規模で取り組んでいく必要があります。
このように、環境面だけで見ても、SDGsに取り組んでいかなければいけない理由は、たくさん見当たります。
このような眼前に迫った課題や近未来に深刻化する問題に、現在から取り組み、将来の子供、孫世代へと美しい地球、サスティナブルな社会を残していくのは、我々大人の使命と言えます。
今回は、SDGsウェディングケーキを通して、SDGsへの理解や構図のイメージに繋がれば幸いです。