飲食店の売上の季節変動|前年比と前月比で見分ける方法

飲食店 売上

パン屋の売上は、春にピークが来て夏に落ちます。

業界の人はだいたいそう言いますし、自分の店でも実際そうでした。

ところが2026年、その形が崩れました。

年内でいちばん売れた月が6月になり、7月の売上は前年同月比で+29.5%。例年なら落ちていく時期に、前年を大きく超えました。

ここで「夏の落ち込みを克服した」と書けたら気持ちいいのですが、記録を並べ直すとそうではありませんでした。

6月から7月の落ち幅は、例年とほとんど変わっていなかったんです。

飲食店の売上の季節変動は、前年比だけを見ていると判断を誤ります。

この記事では、前年比と前月比という2つのものさしを並べて、季節性と水準を切り分ける方法を、自店の4年分の実測記録で説明します。

飲食店の売上の季節変動は「前年比」だけでは分からない

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売上が季節で動くこと自体は、どの業種でも起きます。

問題は、その動きが今年も例年どおりなのか、変わったのかを判断する方法です。前年比だけでは、ここが分かりません。

季節変動のピークは年によってずれる|2026年は6月が最高だった

自分の店では、年内いちばん売れた月を並べるとこうなります。

年内最高月
2023年 3月
2024年 5月
2025年 3月
2026年 6月

2023年と2025年は3月、2024年は5月。パン屋としては素直な形です。

気温が上がりきる前に売れて、夏に向けて落ちていく。

それが2026年は6月でした。

しかも6月は前年同月比で売上+21.2%、客数+17.3%。7月はさらに差が開いて、売上+29.5%、客数+23.1%です。

最初にこの数字を見たときは浮かれました。

夏に強い店になった、と思ったんです・・・でも、それは早とちりでした。

夏に売上が落ちるのは本当か、自店の記録で確かめる

「夏は売上が落ちる」という言い方は、業界の常識としては正しいのかもしれません。

ただ、それが自分の店にどう当てはまるかは、自分の記録でしか分かりません。

前年比というのは「去年の同じ月と比べてどうか」しか教えてくれません。

季節の形が変わったかどうかは、前年比を見ても分からない。それを確かめるには、同じ年の中で月と月を比べる必要があります。

ここを飛ばすと、こういう誤解が起きます。

  • 前年比がプラス → 「今年は夏に強い」と読む
  • 前年比がマイナス → 「今年は夏に弱くなった」と読む

どちらも季節の動きと自店の変化を混ぜて読んでいます。

分けるには、ものさしをもう1本足すしかありません。

7月は前年比+29.5%。それでも前月からは10%落ちていた

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そこで、同じ年の6月と7月を比べ直しました。「6月からどれだけ落ちたか」を年ごとに出すと、こうなります。

6月→7月の落ち幅
2023年 −11.2%
2024年 −10.4%
2025年 −16.0%
2026年 −10.2%

2026年の落ち幅は−10.2%。4年のうちでいちばん小さいとはいえ、2024年の−10.4%とほぼ同じです。

夏に落ちるという動き自体は、2026年もそのまま起きていました。

前年比と前月比の違いは「答えている問いが違う」

同じ7月の同じ数字が、ものさしを変えるだけで正反対の顔をします。

  • 前年比で見ると:+29.5%。過去最高の7月
  • 前月比で見ると:−10.2%。例年どおり落ちている

どちらも事実で、どちらも間違っていません。ただ、答えている問いが違うだけです。

ものさし 答えている問い
前年比 去年より良くなったか
前月比 季節の波は変わったか

自分がやりかけたのは、前年比を見て「季節の波が変わった」と結論づけることでした。

これは問いと答えがずれています。「去年より良くなったか」の答えを、「季節の波は変わったか」の答えとして使ってしまっていた。

前年比と前月比で、同じ数字が正反対に見える

この読み違いは、悪い年にも起きます。前年比がマイナスの月に「うちは弱くなった」と落ち込む。

でも前月比を見たら例年どおりの下げ幅だった、ということがあります。

弱くなったのではなく、去年の同じ月がたまたま良かっただけかもしれません。

逆もあります。

前年比がプラスで安心していたら、前月比では例年より大きく落ちていた。

去年の水準に助けられているだけで、直近の勢いは落ちている状態です。片方だけを見ている限り、この区別はつきません。

季節変動そのものは変わらず、水準だけが上がっていた

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整理すると、2026年に起きたのはこういうことでした。

波の形は変わっていない。波が乗っている土台の高さが上がった。

季節変動の波は同じ形のまま、土台の高さだけが上がった

グラフで言えば、上下の動き方はほぼ同じまま、線全体が上に平行移動した状態です。

だから前年比では大きく伸びて見えるし、前月比では例年どおり落ちて見える。矛盾しているようで、両立します。

季節変動というのは「形」の話で、水準というのは「高さ」の話です。この2つは別々に動きます。

  • 形が変わる例:これまで夏に落ちていたのに、落ちなくなった
  • 高さが変わる例:夏に落ちる動きはそのままだが、落ちた先が去年より高い

2026年に起きたのは後者でした。

季節性と売上の判断を誤ると、打ち手が真逆になる

この区別が実務で大事なのは、打ち手の評価が変わるからです。

もし「夏の落ち込みを克服した」と読んでいたら、夏向けにやった施策が効いた、という評価になります。

来年も同じ夏施策に力を入れるでしょう。

でも実際に効いたのは、季節に関係なく水準を押し上げた何かのほうです。

夏施策ではなく、通年で効いている土台のほうを守らないといけない。同じ数字を見て、力を入れる場所が真逆になります。

もう1つ、この読み方には安心材料としての意味もあります。

7月に前月から10%落ちたとき、記録がなければ「勢いが止まった」と焦ったはずです。

でも例年−10%から−16%落ちる月だと分かっていれば、それは想定内の動きだと判断できます。落ちたことに慌てて余計な手を打たずに済む、というのは地味ですが大きいです。

この区別は、翌年の計画を立てるときにも効きます。季節変動が変わっていないなら、来年も6月から7月にかけて1割前後は落ちる前提で計画を組めます。

仕入れも、仕込みの量も、シフトも、その前提の上に乗っているので、前提が違うと全部がずれます。

予測が当たるかどうかより、外れ方が想定内かどうかのほうが、日々の運営では大事だと思っています。

想定内の落ち込みなら手を打たなくていい。想定外なら理由を探す。この線引きができるだけで、無駄な打ち手がかなり減ります。

週ごとの数字をどう並べて、そこから何を判断しているかは、有料note「店舗集客の教科書」に記録の付け方から書いています。

季節変動について、この数字から説明できること、できないこと

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ここまで書いておいて申し訳ないのですが、なぜ水準が上がったのかは、この数字からは断定できません。

売上の分析方法として、断定できる範囲を線引きする

自分の見立てでは、2023年から段階的にやってきた値上げのあと、客数が戻った流れが本物だったという裏づけです。

ただ、それは見立てであって実証ではありません。

同じ時期に商品構成も、天候も、周辺の状況も動いています。どれがどれだけ効いたのかを、手元のデータで切り分けることはできません。

売上の分析方法として、言えることと言えないことを分けておきます。

季節変動について説明できること

  • 年内最高月が6月にずれた(事実)
  • 7月は前年比+29.5%、客数+23.1%(事実)
  • 6月→7月の落ち幅は−10.2%で、例年の範囲内(事実)
  • したがって、季節変動ではなく水準が動いた(上の3つから言える)

季節変動について説明できないこと

  • 水準が上がった原因が何か(複数の要因が同時に動いていて切り分けられない)
  • 来年も同じ形になるか(1年分のデータで傾向とは言えない)

書ける範囲を超えないというのは、地味ですが記録を続けるうえで大事だと思っています。

原因を決めつけた瞬間に、それ以上調べなくなるからです。

「なぜかは分からないが、水準が上がったのは確かだ」という状態のまま持っておくほうが、翌年の同じ時期に検証できます。

前年比を出す前に、比較する期間の単位を揃える

もう1つ、数字を比べるときに気をつけていることがあります。比較する期間の単位を揃えることです。

自分が年ごとの比較をするときは、1月から7月までの累計で揃えています。

2026年がまだ7月までしか終わっていないからです。

ここを揃えずに「今年はここまでで◯◯」「去年は年間で◯◯」と比べると、月数が違うだけの差を、実力の差として読んでしまいます。

当たり前のようですが、自分の店の数字を見ていると、つい調子の良い月だけを取り出して比べたくなります。

良い月だけを並べれば、どんな年でも成長しているように見えます。

比較の条件を先に決めてから数字を開くという順番にしないと、見たい結論のほうへ数字を寄せてしまう。これは何度かやりました。

飲食店の売上の季節変動を測るために記録する4項目

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ここまでの話は、記録がなければ1つも言えませんでした。

逆に言えば、記録さえあれば誰でも同じ確認ができます。

季節変動を測るなら、日付・売上・客数・天気の4項目から

自分は毎週、売上・客数・客単価・原価率・人時生産性に加えて、前日の最低気温と天気を残しています。

ただ、季節変動を確かめるだけなら、最初は4つで足ります。

  1. 日付
  2. 売上
  3. 客数
  4. その日の天気と気温

この4つを1年分ためると、次の2つが出せるようになります。

  • 前年同月比(去年より良くなったか)
  • 前月比(季節の波は変わったか)

そして見るときは、この2つをセットで見る。片方だけで判断しない。結局それだけのことでした。

なお、週次で数字を見る習慣そのものについては、売上と労働時間のバランスを見る話を人時生産性の計算方法|飲食店の改善手順を解説にまとめています。

記録した数字を実務にどう使うかは、そちらが具体的です。

夏に売上が落ちる理由が、暦なのか気温なのかを分ける

気温と天気を残しておくと後から効きます。「夏に落ちる」と言うとき、それが暦の問題なのか気温の問題なのかは、実は別の話です。

たとえば「7月だから落ちた」のか「その週がとくに暑かったから落ちた」のかは、月単位の数字だけを見ていると区別できません。

前者なら毎年同じ時期に起きるので、仕込みの量や商品構成をあらかじめ変えておけます。

後者なら、気温を見て当日に判断する話になります。打ち手のタイミングがまったく違うのに、月の売上だけを見ていると、どちらも同じ「7月は落ちる」に見えてしまいます。

自分の店では前日の最低気温を毎朝記録しています。

何度を境に何がどう変わるかを言い切れるほどのデータはまだありませんが、少なくとも「暑かった週」と「そうでない週」を後から切り分けられる状態にはなっています。

切り分けられる状態を先に作っておくことが、記録の目的です。売上と客数だけを残していると、あとから戻ってその問いを立てられません。

記録は始めた時点では何の役にも立ちません。1年たって初めて比較対象になります。

いちばん価値が低く見える時期に始めるしかないのが、この作業の面倒なところです。

まとめ|飲食店の売上の季節変動は前年比と前月比で見る

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2026年の夏に自分の店で起きたことを、もう一度整理します。

  • 年内最高月が、例年の3月・5月から6月にずれた
  • 7月は前年同月比で売上+29.5%、客数+23.1%
  • ただし6月→7月の落ち幅は−10.2%で、例年(−10.4%〜−16.0%)の範囲内
  • したがって、季節変動は変わっていない。変わったのは水準
  • 水準が上がった原因は、この数字からは断定できない

飲食店の売上の季節変動を、前年比だけで判断していると、良くなった年は浮かれ、悪くなった年は落ち込みます。

前月比を並べると、そのうちどこまでが季節の動きで、どこからが自分の店の変化なのかが分かれてきます。分かれた瞬間に、打つ手が変わります。

今日から始める形にすると、こうなります。

  • 日付・売上・客数・天気の4項目を記録する
  • 前年同月比と前月比を、いつも並べて出す
  • 前月比が例年の範囲内なら、慌てて手を打たない
  • 範囲を外れたときだけ、理由を探す
  • 比べる前に、比較する期間の単位を揃える

もし今、記録が何もない状態なら、始め方は簡単です。

去年の同じ月を探しに行く必要はありません。今年の先月と今月を並べるところから始めれば十分です。

前年のデータは手元になくても、先月のデータはあります。それを1年続ければ、来年には前年比も使えるようになります。

自分も、最初から4年分の記録があったわけではありません。

1年目は比べる相手がおらず、数字を残しても何も分からない期間がありました。

それでも残したから、いま4年分を並べて「季節変動のほうは変わっていない」と言い切れます。

記録をやめていたら、今年の数字を見て「夏に強い店になった」と誤読したまま来年の計画を立てていたはずです。

週次で実際にどの数字をどう並べて、そこから何を判断しているかは、有料note「店舗集客の教科書」に詳しく書いています。

記録の付け方から知りたい方はそちらへどうぞ。


この記事で使ったデータについて

本文の数値はすべて、筆者が運営するパン屋(大阪門真店)の実測記録に基づきます。売上の実額は公開せず、前年同月比・前月比の増減率のみを使用しています。増減率は実額から再計算して照合済みです。