飲食店の原価率を下げる方法|30%の壁を「下げずに」超えた実例

飲食店 原価率

「原価率を下げたい。でも、量を減らしたり食材の質を落としたりして、お客様が離れるのは怖い」

飲食店やパン店を運営していると、仕入れ価格が上がるたびに、この問題へ向き合うことになります。私も以前は、原価率を下げることだけが利益改善だと考えていました。

しかし、実店舗の数字を追って分かったのは、原価率を無理に下げるより、まず崩れないように守り、人件費と合わせたFL比率で利益を管理するほうが現実的な場合もあるということです。

私の店舗では、仕入率は2024年の30.3%から2026年の30.1%へ、わずか0.2ポイントの改善にとどまりました。

一方、人件費率は38.8%から31.5%へ改善し、FL比率は69.1%から61.5%になりました。原価率を大幅に下げた成功談ではありません。原価率をほぼ横ばいで守りながら、経営全体を立て直した記録です。

この記事では、原価率の計算方法と目安、上がる原因、味や量を落とさず見直す手順、そして原価率だけを追わない管理方法を、実測値を交えて整理します。

 

飲食店の原価率とは?計算方法と業態別の目安

飲食店 原価率

飲食店の原価率とは、売上高に対して食材などの売上原価が占める割合です。数字を下げること自体が目的ではなく、販売価格に対して、商品を提供するための直接的な材料費がどれだけ必要だったかを確認する指標です。

原価率の計算式

計算式は次のとおりです。

原価率(%)=売上原価 ÷ 売上高 × 100

たとえば、月商500万円に対して売上原価が150万円なら、原価率は30%です。

150万円 ÷ 500万円 × 100 = 30%

ここで注意したいのは、仕入額と売上原価は必ずしも同じではないことです。

月初在庫や月末在庫がある場合、売上原価は一般に「月初棚卸高+当月仕入高-月末棚卸高」で考えます。仕入れた食材がまだ在庫として残っているのに、当月の原価へすべて入れると、実態より高く見えることがあります。

「30%」は絶対的な正解ではない

飲食店では「原価率30%」がよく目安として語られます。しかし、業態、商品構成、客単価、テイクアウト比率によって適正値は変わります。

日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」の2023年度データでは、一般飲食店の売上原価率は36.9%です。平均値は、自店の異常を見つける比較材料にはなりますが、その数字に合わせれば利益が残るという保証ではありません。

たとえば、原価率の高い看板商品が来店理由になり、原価率の低いドリンクやサイドメニューも一緒に売れるなら、店全体では利益を確保できます。

逆に、原価率が低くても、客数が少なく、人員を多く配置していれば利益は残りません。

見るべきなのは、単品ごとの原価率と、店全体の加重平均です。売上構成比を加味せず、原価率の高い商品から機械的に削ると、店の魅力まで失うおそれがあります。

 

飲食店の原価率が上がる典型的な原因

飲食店 原価率 上がる原因

原価率が上がったとき、すぐに「仕入れ価格が上がったから」と結論づけるのは早計です。実際には、価格、量、廃棄、販売構成、記録のずれが重なっていることがあります。

仕入れ価格の高騰を販売価格へ反映できていない

仕入れ単価が上がっても販売価格を据え置けば、同じ商品を同じ数量販売しても原価率は上がります。

私自身、デフレ発想のまま価格設定を続け、「安いから選ばれている」と思い込んで値決めを動かせなかった時期がありました。

ただし、仕入れ値が上がるたびに全品を一律値上げする方法も粗すぎます。

商品別の原価額、販売数、粗利益額を並べ、来店理由になる商品、利益を作る商品、動きの悪い商品を分けて判断します。値上げと客数の関係は、飲食店の値上げで客離れは起きるのかを実測値で検証した記事でも詳しくまとめています。

ポーションと仕込みが属人的になっている

同じ商品でも、担当者によって盛り付け量が違えば、レシピ上の原価と実際の原価に差が出ます。「少し多め」が毎日積み重なると、月単位では無視できません。

さらに、仕込み量を経験だけで決めると、売り切れを恐れて多く作りすぎたり、逆に品切れで販売機会を失ったりします。原価率が高い原因を確認するには、レシピ原価だけでなく、実使用量、廃棄、値引き、品切れまでつなげて見る必要があります。

主な原因 確認する数字 最初の対処
仕入れ単価の上昇 商品別の仕入れ単価推移 規格・仕入れ先・販売価格を比較
盛り付けのばらつき 標準量と実使用量 計量器具と写真付き基準を統一
過剰な仕込み 製造数・販売数・廃棄数 曜日・天候別に仕込み量を調整
商品構成の偏り 商品別売上・粗利益額 看板商品と利益商品の役割を分ける
棚卸しのずれ 理論在庫と実在庫 棚卸し単位と入力ルールを統一

 

原価率を下げる方法|味や量を落とさない5つの見直し

飲食店 原価率 下げる

原価率を下げる方法は、安い食材へ置き換えることだけではありません。お客様が感じる価値を守りながら、見えないロスを減らす順番で進めます。

1.メニュー構成を見直す

商品を「販売数」と「粗利益額」の2軸で並べます。原価率が高くても多く売れ、関連商品の注文につながる看板商品は、残す価値があります。一方、原価率が高く、販売数も少なく、仕込みの手間まで大きい商品は見直し候補です。

原価率の低い商品を単純に増やすのではなく、セット提案、トッピング、ドリンクなど、主力商品と自然に組み合わせられる形で売上構成を整えます。

2.ポーション管理を標準化する

レシピに重量や個数を書くだけでなく、使用するスプーン、レードル、カット幅、完成写真までそろえます。繁忙時間でも迷わず同じ量を出せる状態が理想です。

標準化は「減らすため」ではなく、どのお客様にも同じ品質を届けるために行います。

量を変える必要がある場合は、価格や見せ方も含めて商品設計として判断し、現場の感覚だけで少しずつ減らすことは避けます。

3.廃棄記録を7項目で残す

私の店舗では、廃棄を「廃棄金額だけ」でまとめず、次の7項目で記録しています。

  1. 商品名
  2. 製造数
  3. 販売数
  4. 廃棄数
  5. 廃棄原価
  6. 廃棄理由
  7. 売り切れ時間

廃棄率は現状5%程度ですが、過去との比較データはないため、「何%改善した」とは言えません。

それでも、何が、なぜ、いつ残ったかを記録すると、値下げすべき時間帯や、仕込みを減らす曜日が見えます。

4.仕入れ条件を比較する

単価だけでなく、ロット、配送頻度、歩留まり、品質の安定性を比較します。安く仕入れても、ロットが大きく廃棄が増えれば、実際の使用原価は高くなります。

仕入れ先との交渉では「安くしてほしい」だけでなく、発注単位の変更、代替規格、納品回数、相場が落ち着いた際の見直し条件を相談します。比較するときは、1個当たりではなく、可食部1グラム当たりなど、同じ単位へそろえることが大切です。

5.条件別の販売データで発注量を変える

販売数を、平日と土日、晴れと雨、告知した日としない日に分けて見ます。全日の平均だけでは、雨の日の過剰仕込みや、告知日の品切れを見落とします。

まず4週間分を同じ形式で記録し、次週の仕込み量を小さく調整します。

一度に大きく減らさず、売り切れ時間と機会損失も確認することで、廃棄削減と売上確保を両立しやすくなります。

 

実例|原価率を「下げる」のではなく「守る」で利益を作った話

飲食店 原価率 下げた実例

私が原価率だけに強くこだわっていた頃、店は利益を残しにくい状態でした。安く提供することがお客様のためだと思い、価格を動かさないまま、現場の工夫だけで吸収しようとしていたからです。

2024年の仕入率は30.3%、人件費率は38.8%で、FL比率は69.1%でした。FL比率とは、食材費(Food)と人件費(Labor)を合計し、売上高で割った割合です。

FL比率(%)=(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100

そこで、仕入率を無理に大きく下げることより、ポーション、廃棄記録、条件別の仕込みを整え、同時に時間帯別の配置と作業工程を見直しました。飲食店の人時生産性を計算して改善する手順と同じく、売上と勤務時間をセットで確認するようにしたのです。

結果は次のとおりです。

指標 2024年 2026年 変化
仕入率(原価率) 30.3% 30.1% 0.2ポイント改善
人件費率 38.8% 31.5% 7.3ポイント改善
FL比率 69.1% 61.5% 7.6ポイント改善

この数字から言えるのは、「原価率を大幅に下げた」ことではありません。原価率はほぼ横ばいです。改善の中心は人件費率でした。ただし、仕入れ価格が動く中で原価率を30%前後に維持できたからこそ、人件費側の改善がFL比率へ反映されました。

原価率を下げられなかったことを失敗と見るのではなく、商品価値を守りながら比率を維持できたと捉える。これは、現場の品質と利益を両立させるうえで大きな判断の変化でした。

 

原価率だけを見てはいけない理由|FL比率で管理する視点

FL比率

原価率だけを下げても、人件費や販売数が悪化すれば利益は残りません。

反対に、原価率が少し高くても、客単価、回転、作業効率を含めて粗利益が確保できるなら、経営として成立する場合があります。

週次では、少なくとも次の5つを同じ画面や表で確認します。

  • 売上高
  • 売上原価と原価率
  • 人件費と人件費率
  • FL比率
  • 廃棄原価と売り切れ時間

数字が悪化したときは、原価率を一律に下げるのではなく、どの商品の、どの曜日の、どの工程でずれたのかを探します。

対策後は、原価率だけでなく、販売数、粗利益額、口コミや返品、品切れ時間も確認します。利益が改善しても、お客様が感じる価値が落ちていれば長続きしません。

飲食店の原価率を下げる第一歩は、食材の質を落とすことではなく、計算方法をそろえ、商品別の粗利益と廃棄を見えるようにすることです。

そして、原価率を守ったうえで、人件費と合わせたFL比率を管理します。

私の店舗も、仕入率30.3%から30.1%という小さな変化でした。それでも、全体を見ることでFL比率は69.1%から61.5%へ改善しました。

まずは直近4週間の売上、原価、人件費、廃棄を一枚へまとめ、どこに最初の改善余地があるかを確認してみてください。

店舗の数字を整理し、改善案を実行順へ落とし込む方法をさらに知りたい方は、店舗集客と経営改善を30日で進める実践メソッドをご覧ください。