飲食店の人件費削減|FL比率を7.6ポイント下げた実例で解説
「人件費が高い。けれど、人を減らしたら店が回らない」。飲食店を運営していると、この板挟みに何度も直面します。
私の店でも、2024年の人件費率は年平均38.8%まで上がり、7月は42.3%、9月は43.9%でした。FL比率は69.1%。売上が立っても利益が残りにくい状態です。
その後、人員を一律に削るのではなく、配置、業務、集客、データ管理を見直し、2026年の人件費率は31.5%、FL比率は61.5%になりました。
この記事では、飲食店の人件費削減を「人数を減らす話」ではなく、「必要な時間に必要な人を置き、1時間の価値を高める話」として整理します。
自店で実際に改善した数字と、週次管理の方法も紹介します。
もくじ
飲食店の人件費率、適正な目安は何%か

最初に見るべき数字は、人件費の総額ではなく人件費率です。
人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100
たとえば月の人件費が120万円、売上高が400万円なら、人件費率は30%です。
同じ120万円でも売上が300万円なら40%になります。人件費の額だけを見ていると、売上とのバランスを見誤ります。
業態別の数字をそのまま自店の正解にしない
人件費率は、セルフサービスかフルサービスか、仕込みが多いか、営業時間が長いかで変わります。
そのため「飲食店なら一律に何%」とは決められません。
まず自店の月次推移を出し、同じ業態・同じ運営条件で比較することが大切です。
金融庁の委託事業として日本生産性本部が作成した「飲食業 業種別支援の着眼点」では、材料費と人件費を合わせたFL比率について、60%が適正値の一つの目安と示されています。
営業利益10%程度を目指す構成例も掲載されています。
ただし、これは絶対基準ではなく、立地や家賃、設備、業態によって判断するための出発点です。
| 確認する数字 | 計算式 | 見る意味 |
|---|---|---|
| 人件費率 | 人件費 ÷ 売上高 × 100 | 売上に対する人件費の重さ |
| FL比率 | (材料費+人件費)÷ 売上高 × 100 | 店舗運営の主要コストの合計 |
| 人時売上高 | 売上高 ÷ 総労働時間 | 1時間あたりの売上 |
| 人時生産性 | 粗利益 ÷ 総労働時間 | 1時間あたりに生み出した粗利益 |
人件費率が上がる典型的な原因

人件費率が上がる原因は「スタッフが多い」だけではありません。私の店で大きかったのは、売上の変動と人員配置がつながっていなかったことです。
売上変動を人員配置へ反映できていない
忙しい時間に人が足りず、落ち着いた時間には人が余る。この状態では、現場の負担が大きいのに人件費率も高いという、最も避けたい結果になります。
月間の売上だけでは、このズレは見えません。
曜日別、時間帯別、工程別に分けて、売上と労働時間を並べます。
ピーク前の仕込み、営業中の製造・接客、閉店後の片付けまで含めて見ることで、どこに余白があるかが分かります。
労働時間と人件費率を記録していない
以前の私は、売上が伸びれば利益も残ると考えがちでした。
しかし、売上と同じ割合で勤務時間が増えれば、利益は増えません。人件費率が40%台になった時期は、数字を見ていても、翌週の配置へ落とし込む精度が足りませんでした。
最低限、次の4項目を週次で並べます。
- 売上高
- 粗利益
- 総労働時間
- 人件費額
この4つがあれば、人件費率、人時売上高、人時生産性を同じ基準で追えます。
人件費率を7.3ポイント下げるためにやった4つのこと

自店では、2024年の人件費率38.8%が2026年に31.5%となり、7.3ポイント下がりました。
FL比率は69.1%から61.5%へ7.6ポイント改善しています。
この改善を「食材費を下げた結果」と混同しないことが重要です。
原価率は30.3%から30.1%でほぼ横ばいでした。改善の大部分は人件費率です。原価側の管理は、別記事の「飲食店の原価率を下げる方法」で分けて扱います。
1.時間帯と工程ごとの配置を適正化した
単純に一人減らすのではなく、製造、品出し、接客、片付けのどこに何人必要かを見直しました。
ピーク時にはサービス品質を守り、谷の時間には作業をまとめます。「人数」より「置き方」を変えたのが最初の一歩です。
2.業務効率化を一度で終わらせなかった
作業手順を一度変えて終わりではなく、毎週の数字と現場の声を見ながら調整しました。
数分の改善でも、毎日、複数人で繰り返す作業なら年間では大きな差になります。
3.集客を安定させ、必要人員を読みやすくした
客数の振れが大きいと、欠員を恐れて多めに組むか、繁忙時に足りなくなるかのどちらかです。
集客が安定すると、必要な仕込み量と配置人数を予測しやすくなります。人件費削減は、シフト表だけで完結しません。
4.過去データから製造目標と予実管理を改善した
曜日、天候、告知の有無など条件別に実績を見て、製造目標とシフトを決めるようにしました。
予測と実績の差を翌週に反映すると、作りすぎと人の余りが少しずつ減ります。
| 改善前に起きていたこと | 見直したこと | 確認する数字 |
|---|---|---|
| 谷の時間にも同じ人数 | 時間帯別の配置 | 30分・1時間単位の売上と労働時間 |
| 改善が一度きり | 週次で小さく更新 | 作業時間、残業時間 |
| 客数の振れが大きい | 集客と需要の安定 | 客数、客単価、天候・告知条件 |
| 経験だけで製造・配置 | 予測と実績を比較 | 製造数、売上、総労働時間 |
人件費率を7ポイント下げた考え方を、店舗集客から数字管理まで一つの流れで整理したい方は、AI活用とAIマンダラで店舗集客を改善する実践メソッドも参考にしてください。
人時生産性を軸にした管理の仕方

人件費率だけを見ていると、売上が落ちた日に数字が悪化し、何を直すべきか分からなくなります。
そこで私が週次で確認しているのが人時生産性です。
人時生産性 = 粗利益 ÷ 総労働時間
自店では現在、1時間あたり4,000円以上で回しています。
これは自店の実測であり、他店にそのまま当てはまる目標ではありません。業態、粗利率、営業時間が違えば基準も変わります。
仕様書で指定された中小企業庁資料には1,902円/時という集計値がありますが、調査対象・指標定義との対応を本文作成時点で十分に確認できなかったため、この記事では比較値として断定しません。
自店では同じ計算式を継続して使い、前週・前年同週との変化を判断材料にしています。
週次管理は「結果」ではなく「次の配置」につなげる
週次で見る手順はシンプルです。
- その週の粗利益と総労働時間を確定する
- 人時生産性を計算する
- 前週、前年同週、計画値と比較する
- 差が出た曜日・時間帯・工程を特定する
- 翌週の製造目標と人員配置を一つだけ修正する
人時生産性を高める目的は、スタッフを急がせることではありません。
段取りの重複、待ち時間、作りすぎ、手戻りを減らし、同じ時間でより安定した価値を生み出すことです。
人時生産性の定義や計算方法を先に整理したい場合は、サイト内の「人時生産性の計算方法|飲食店の改善手順を解説」も併せて確認してください。
飲食店で人件費を削りすぎるリスクとバランス

数字が悪いと、最も早くできる対策はシフトを削ることです。
しかし、必要な人まで減らせば、提供の遅れ、清掃不足、接客品質の低下、スタッフの疲弊につながります。その結果、客数が減り、売上が下がって、人件費率がかえって上がることもあります。
判断の順番は次のとおりです。
- 不要な待ち時間や重複作業を減らす
- 時間帯と工程に合わせて配置を変える
- 製造・仕込み量の予測精度を上げる
- 集客を安定させる
- それでも余剰がある時間だけシフトを調整する
人件費を削るのではなく、配置と予測の精度を上げる。
これが、私が実店舗で人件費率を38.8%から31.5%へ下げる過程で得た結論です。
飲食店の人件費削減は、一度のシフト変更で完成しません。
毎週同じ計算式で数字を出し、現場に一つ戻し、翌週に確かめる。その繰り返しが、サービス品質を守りながらFL比率を改善する現実的な方法です。
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