パン屋の開業で失敗しやすいこと|始める前に見直したい資金・商品・人員
パン屋のフランチャイズに加盟して2022年から店を出し、いまは2店舗を運営しています。
開業前に立てた計画は、正直なところ甘い部分がいくつもありました。資金の見積もり、価格の決め方、人の配置。どれも「やってみて初めて分かった」というのが実感です。
この記事では、パン屋の開業でつまずきやすい点を、資金・商品・人員の3つに分けて書きます。
一般的な失敗パターンの紹介だけでなく、私自身が2号店の出店で予測を外した数字と、価格設定を誤って利益が残らなくなった実例も出します。
もくじ
パン屋の開業で資金と坪数を「相場」で決めると失敗する

パン屋の開業資金は、業種のなかでも高めに出やすいと言われています。開業支援サイトでは、必要な開業資金の目安を1,000〜2,000万円程度、業務用オーブンだけで新品なら300〜500万円かかると紹介されています。
USEN canaeru「パン屋の開業で失敗してしまう理由とは?」より引用
厨房設備が店舗面積の半分以上を占めるケースもあり、坪数が大きくなるほど、この設備投資がそのまま重くなります。
坪数を大きく取ることが、資金計画のリスクになる
開業を考えるとき、多くの人は「広い店のほうが売上も伸びる」と考えます。
私も1号店を出すときはそう思っていました。しかし、坪数が増えれば、厨房設備・内装・家賃のすべてが比例して増えます。売上が坪数どおりに伸びる保証はどこにもありません。
私の2号店は5.60坪という、かなり小さい販売特化型の店です。坪単価は約49,000円という決して安くない立地でしたが、坪あたり月商は約23万円/坪、客単価は約496円で回っています。
坪数を絞ったことで、設備投資と家賃の総額を抑えられたのは、開業前の判断としてはうまくいった部分でした。
厨房設備は、業務用オーブンだけでなくミキサーや発酵器も必要になり、店舗面積の半分以上を厨房が占めるケースも珍しくないと紹介されています。
坪数が増えるということは、単に家賃が増えるだけでなく、この厨房設備の台数や容量も比例して増えるということです。
開業前に「販売スペースを広く取りたい」と考える人は多いのですが、パン屋の場合はまず厨房側の必要面積から逆算したほうが、あとの資金繰りが安定すると感じています。
大型店の計画は、いまは持たないと決めている
いまの出店方針は、5坪程度の小型店で収益を最大化することです。大規模な出店計画と、それに見合う予算が必要な店は、当面やらないと決めています。
パン屋の開業は、坪数を大きくするほど失敗したときの傷も深くなります。
開業前に「この坪数で本当に必要か」を見直すだけで、資金面の失敗はかなり避けられると思います。
坪数を絞った出店の考え方は小型店の出店、坪数を絞るほど収益が伸びたで詳しく書いています。
パン屋の開業直後、私は契約時の予測売上のズレで家賃比率に失敗した

坪数の話と地続きになりますが、私が2号店の出店で実際に失敗したのは、坪数そのものではなく、契約時点で立てた予測売上でした。
立地は良かった。外したのは予測の精度だった
2号店は京阪門真市駅前という立地で、駅からの動線や人通りは決して悪くありませんでした。
問題は、その立地に見合うと考えた予測売上を根拠に家賃を決めてしまったことです。開業してみると、その予測に届かない月が続き、家賃比率が20%を超える状態が何か月も続きました。
パン屋の開業で人員や商品の失敗が語られることは多いのですが、契約時点の予測売上の精度がその後の家賃比率をずっと縛るという因果は、開業前の人が案外知らないところだと感じています。
立地の良し悪しだけで判断すると、この落とし穴に気づきにくいです。
てこ入れが遅れたことも、失敗の一部だった
もう一つ反省しているのは、予測とのズレに気づいてから、手を打つまでの時間です。
数字が想定を下回っているのは分かっていたのに、対応を先送りにしてしまいました。
いま同じ場面に立つなら、予測売上を根拠づけたうえで家賃を握り、実績が出た時点ですぐに交渉に動くと思います。実績が出れば、家賃は一度決まっても動かせる材料になります。
パン屋の開業資金をどう組み立てるかは、飲食店の開業資金はいくら必要か|5坪の実額から考えるで坪単価から逆算する考え方を詳しく書いています。
あわせて読むと、資金計画の立て方がつかみやすいと思います。
パン屋の開業で人員が崩れるのは、人件費率を見ずにシフトを組むから

パン屋は早朝からの仕込みが必要な業態です。
人員の失敗というと、まず「早朝のシフトが埋まらない」という話になりがちですが、私が実際につまずいたのはその手前、人件費率という数字を見ないままシフトを組んでいたことでした。
早朝勤務は求人を出しても集まりにくく、いる人数でどうにか回そうとした結果、1人あたりの負担が重くなり、辞めてしまうという流れもよく聞きます。
私の店でも、忙しい時間帯に人を厚めに置いたつもりが、実際には工程のどこかに偏っていて、別の時間帯が薄くなっていたということがありました。
人数を足すだけでは解決せず、時間帯ごとの仕事量を見てから人を配置する視点が必要でした。
原価率は平均より低いのに、利益が残らなかった
ある時期、仕入率は30.3%と、業界の中央値帯より低い水準でした。それなのに利益はほとんど残っていませんでした。
原因は人件費率で、38.8%まで上がっていたのです。原価率と人件費率を足したFL比率は69.1%。月別に見ると人件費率が42〜44%台まで上がる月もありました。
原価率だけを見て「うまくやれている」と思い込んでいたのが失敗でした。パン屋の開業では、原価と人員をセットで見る習慣がないと、この崩れに気づけません。
人件費率を7ポイント下げて分かったこと
その後、人件費率は31.5%まで下がり、FL比率も61.5%まで戻りました。
やったことは、
- 時間帯・工程ごとの人の置き方を見直したこと
- 業務効率化を一度きりで終わらせず続けたこと
- 集客が安定して必要人員を読めるようになったこと
- 過去データの分析精度を上げて作りすぎと人の余りを減らしたこと
この4つです。
原価率と人件費率をセットで見る考え方はパン屋の経営で利益率を上げるには|実店舗の実数で解説に詳しく書いています。
人員配置の見直しは、開業直後よりも軌道に乗り始めた頃のほうが手を入れやすいというのが実感です。
パン屋の開業前にできることは、人件費率の目安を先に決めておき、シフトを組む段階からその数字を意識することだと思います。
パン屋の開業で商品の価格設定を見誤ると、原価が上がっても値段が動かせなくなる

人員の話とつながりますが、私が開業当初に見誤っていたのは、価格設定の前提そのものでした。
デフレ発想のまま値段を決めてしまった
世の中の物価が上がっているのに、開業当初に決めた「安さで選ばれる」という発想のまま、価格を据え置いていました。
原価が上がり続けても値上げの判断を先送りにした結果、原価率が上がり、それを補うために人件費側で無理をする構造になっていました。
原価率を守るために人を使っていた、というのが正確な言い方だと思います。
パン屋の商品ラインナップを広げすぎるのも、よくある失敗として紹介されています
品目を増やすほど原価管理と廃棄の把握は難しくなり、価格の見直しにも手が回らなくなります。
私の場合も、商品数と価格の両方を同時に見直す発想がありませんでした。
パン屋は1点あたりの単価が低い業態でもあります。世帯あたりの1日のパン購入額はごくわずかとされ、客単価を上げにくい構造だと紹介している記事もあります
参考:USEN canaeru「パン屋の開業で失敗してしまう理由とは?」
単価が低いぶん、原価が数円上がっただけでも利益への影響は大きくなります。
品目を絞り、1品ごとの原価と価格の関係を細かく追えるようにしておくことが、開業直後の商品面の失敗を防ぐ土台になると思います。
値上げを決めたら、客数は一度落ちて2年で戻った
主力商品は2023年の120円から、2024年に130円、2025年に150円へと2回値上げしました。
値上げ直後、客数は前年比で14.7%落ちました。ここは事実として認めるしかありません。
ただ、2年かけて客数は値上げ前とほぼ同じ水準まで戻り、客単価は757円から876円に上がった分、売上は16%ほど増えています。
パン屋の開業時に価格を安く設定しすぎると、あとで値上げする判断そのものが重くなります。
開業前の段階で、原価が上がった場合にどこまで値段を動かせるかを一度シミュレーションしておくことをおすすめします。
まとめ|パン屋の開業で失敗しないために、今日確認しておきたい3つの数字
この記事の要点を整理します。
- 資金:坪数を大きく取るほど設備投資と家賃が増える。5坪程度の小型店でも坪あたり月商約23万円/坪、客単価約496円で回った実例がある
- 資金:契約時点の予測売上の精度が、その後の家賃比率をずっと左右する。私は2号店で家賃比率20%超という状態を招いた
- 人員:原価率だけでなく人件費率をセットで見ないと、FL比率が69.1%まで悪化しても気づけない
- 商品:デフレ発想のまま価格を据え置くと、原価が上がったときに動かせなくなる。値上げ後は客数が一度落ちても、2年で戻る余地はある
パン屋の開業で失敗しやすいのは、資金・商品・人員のどれか一つではなく、この3つが同時に、しかも別々の数字として見えてしまうことだと感じました。






