飲食店の開業資金はいくら必要か|5坪の実額から考える
飲食店を開業したいと考えたとき、最初にぶつかる壁が「開業資金はいくら必要か」という問いです。
私もパン屋のフランチャイズに加盟して1店舗目を出したときも、2店舗目を京阪門真市駅前に出したときも、この問いから逃げることはできませんでした。
世の中の相場感を知ることは大事ですが、相場だけを見ていても、自分の店にいくら必要かは分かりません。
この記事では、一般的な相場と、私が実際に運営している5.60坪の小型店の実測データを並べて、開業資金をどう考えればいいかをまとめます。
もくじ
飲食店の開業資金はいくら必要か、まず知っておきたい相場感

飲食店の開業資金がいくらかかるかを考える前に、まず全業種の相場を押さえておきます。
開業費の平均は975万円、中央値は600万円
日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、開業費の平均値は975万円、中央値は600万円です。
飲食店の場合は、内装工事や厨房設備にお金がかかりやすいため、1,000万円程度の開業費が必要と言われています。
開業費の分布を見ると、500万円未満が41.8%、500万〜1,000万円未満が29.7%、1,000万〜2,000万円未満が18.5%、2,000万円以上が10.0%となっており、500万円台までに約4割が収まっている一方で、1,000万円を超える開業も珍しくありません。
平均と中央値の差が意味すること
平均975万円と中央値600万円の差が大きいのは、一部の大型な出店が平均を押し上げているからです。
私の感覚では、これから開業する人が目安にすべきなのは、平均よりも中央値に近い数字です。
ただし、この数字はあくまで全業種の合計であり、飲食店だけを取り出した金額ではありません。
飲食店は内装や厨房設備にお金がかかる業種なので、中央値よりもう少し上を見ておいたほうが安全だと感じています。
相場を知っても、自分の店の金額は分からない
相場を知ることには意味がありますが、相場だけでは「自分の店にいくら必要か」という問いには答えられません。
開業資金がいくらになるかは、業態、坪数、立地の坪単価によって大きく変わるからです。
うちが実際に開業資金を考えるときに使っているのは、総額から考える方法ではなく、坪単価から逆算する方法でした。
開業資金は「総額」ではなく坪単価と家賃条件から逆算すると具体的になる

開業資金がいくらか分からず不安になるのは、総額という大きすぎる数字から考え始めてしまうからだと思います。
2号店は5.60坪、坪単価は約49,000円だった
私の手掛けた2号店(販売特化店)は、図面から実測すると5.60坪、この物件の家賃の坪単価は約49,000円でした。
坪数と坪単価が分かれば、家賃という毎月の固定費の大きさが具体的に見えてきます。
開業資金の中で、敷金や保証金といった物件取得費は、この家賃の水準に連動して決まることが多く、坪単価が高いほど初期にまとまった金額が必要になります。
坪数を先に決めると、開業資金の計算がしやすくなる
私が出店を考えるときは、まず坪数の上限を決めてから、その中で何を売るかを組み立てます。
総額を先に決めて坪数を逆算するのではなく、坪数と坪単価を先に押さえたほうが、開業資金がいくらになるかの見通しが立てやすいと感じています。
5.60坪という小さな面積でも、駅前の立地であれば坪単価は安くありません。逆に、坪数を絞ることで、内装工事費や厨房設備費も面積に応じて抑えられます。
坪あたり月商を先に見積もっておくと、資金計画に無理が出にくい
2号店は2026年1〜7月平均で、坪あたり月商が約23万円という水準まで積み上がっています。
開業前の資金計画では、坪単価に見合うだけの坪あたり月商を作れそうかを、開業資金の計算と同時に考えておく必要があります。
家賃という支出だけを見て資金を積んでも、それに見合う売上の見通しがなければ、開業資金があっという間に運転資金へと吸収されてしまいます。
開業資金を抑える選択肢もある——間借りから始めて自己資金の負担を減らす

開業資金という言葉を聞くと、店舗をまるごと借りる前提で考えてしまいがちですが、それだけが選択肢ではありません。
間借りなら、開業資金を大きく抑えて始められる
2026年7月から9月にかけて、週2回、間借りでベーグルの販売を試しています。
1回あたりの売上は2.5〜3万円前後で、積極的なプロモーションをしていないにもかかわらず、フォロワーやLINE登録は増えてきました。
間借りという形であれば、物件を単独で借りるための開業資金は要らず、必要な設備と最低限の材料費だけで始められます。
開業資金を抑えたい人にとって、間借りは自己資金の負担を減らしながら実験できる選択肢だと感じています。
小さく始めても、集客の土台は作れる
間借りの週2回営業でも、LINE登録は300名近くまで増えましたので、この規模でも、プッシュ営業ができる状態を作れることが分かっています。
開業資金を大きくかけて出店するよりも先に、小さな規模で集客の土台を作れるかどうかを試しておくと、本格的に出店するときの開業資金の使い方にも自信が持てます。
間借りで得た手応えを、本出店の判断材料にする
間借りはあくまで試す場であって、最終形ではありません。
それでも、開業資金をかける前に、小さな規模で反応を確かめられたことには意味がありました。
開業資金がいくら必要かを考える前に、まず小さく試して手応えを確かめるという順番も、選択肢の1つとして持っておいたほうがいいと思っています。
開業資金を十分に準備しても、契約時点の予測が甘いと資金繰りは崩れる

開業資金の話は「最初にいくら用意するか」で終わりがちですが、本当に効いてくるのはその先です。
2号店は、開業資金の金額ではなく予測の精度でつまずいた
2号店は立地自体が悪かったわけではありません。問題は、契約時点で立てた予測売上が見込み違いだったことでした。
その予測を前提に家賃という固定費が決まったため、家賃比率が20%を超える月が続きました。
開業資金をどれだけ十分に用意していても、契約時点の売上予測の精度が甘ければ、その後の資金繰りをずっと縛ることになります。
開業資金の計算は、初期費用だけでなく、この予測の精度とセットで考える必要があると痛感しました。
開業資金の使い道は、予測が外れたときの余力にも回しておく
開業資金を考えるとき、内装や設備にすべてを使い切ってしまうと、予測が外れたときに動ける余力が残りません。
私の経験では、開業資金の一部は、家賃比率が想定より高く出た数か月をしのぐための運転資金として残しておく必要がありました。
開業資金がいくら必要かという問いには、初期費用だけでなく、この余力の分まで含めて答えるべきだと考えています。
実績が出れば、開業後に資金繰りを立て直す余地もある
契約時点の予測が外れても、そこで終わりではありません。
実績が積み上がれば、店舗の家賃交渉はできるで書いたとおり、家賃という固定費自体を見直せる余地も出てきます。
開業資金の計画は、開業した瞬間で完結するのではなく、開業後の実績とセットで見直し続けるものだと感じています。坪数を絞った出店の考え方は小型店の出店、坪数を絞るほど収益が伸びたにもまとめています。
まとめ|飲食店の開業資金は「相場」より「坪単価」と「予測の精度」で決まる

飲食店の開業資金がいくら必要かという問いに、万人共通の正解はありません。
要点を整理しておきます。
- 開業費の相場は平均975万円、中央値600万円。飲食店は1,000万円程度と言われるが、これは目安にすぎない
- 開業資金は総額ではなく、坪単価と坪数から逆算すると具体的になる
- 間借りのように、開業資金を抑えて小さく試す選択肢もある
- 開業資金をどれだけ用意しても、契約時点の予測売上の精度が資金繰りを縛る
- 開業資金の一部は、予測が外れたときの余力として残しておく
飲食店の開業を考えているなら、開業資金がいくら必要かという問いを、総額の相場だけで済ませず、自分が出す店の坪数と坪単価に置き換えて考えてみてください。
私も、5.60坪という小さな店舗の実測データを積み上げてきたからこそ、次に出店するときの開業資金の考え方が、以前よりずっと具体的になりました。
出店の坪効率や家賃交渉の考え方は小型店の出店、坪数を絞るほど収益が伸びたと店舗の家賃交渉はできるにまとめていますので、合わせて参考にして下さい。







