パン屋の経営で利益率を上げるには|実店舗の実数で解説

パン屋 経営 利益率

パン屋を2店舗まわしています。数年前、こんな状態でした。

原価率は業界平均より低い。それなのに、利益が残らない。

原価率だけを見ていたので、何が悪いのか分かりませんでした。

むしろ「うちは原価を抑えられているほうだ」と思っていたくらいです。

答えが見えたのは、原価率と人件費率を足して見るようにしてからでした。

この記事では、パン屋の経営で利益率をどう見るかを、業界平均の数字と、自分の店の実測値の両方で書きます。

FL比率が69.1%まで悪化していたのを、一年で61.5%まで戻した記録もそのまま出します。

パン屋の利益率の平均は5〜15%|個人経営だと幅がもっと大きい

パン屋 経営 利益率

最初に、外の数字を置いておきます。自分の店がどのあたりにいるのかを知らないと、良いのか悪いのかが判断できません。

ベーカリー専門の情報サイト「パン屋の原価率・利益率の業界平均|目安と改善のポイント」では、パン屋の純利益率の目安を5〜15%としています。

材料原価率は30〜40%、なかでも35〜40%が一般的な中央値帯だとしています。

幅が広いと感じるかもしれませんが、これはパン屋という業態の性格をよく表しています。

イートインの有無、製造の内製率、販売点数、立地。この4つが違うだけで、利益率は簡単に数ポイント動きます。

パン屋の開業時に見込む利益率は、業界平均より低く置く

これから開業する人に伝えたいのは、この平均値をそのまま事業計画に入れないほうがいいということです。

平均には、すでに軌道に乗った店が含まれています。

開業直後は、製造の歩留まりが安定せず、廃棄も多く、売れ筋も読めません。同じ商品構成でも、1年目と3年目では原価率が変わります。

自分の場合も、最初から今の数字だったわけではありません。

パン屋の開業時に利益率を見込むなら、業界平均の下限、つまり5%前後を置いておくくらいがちょうどいいと思っています。

そこで回る計画にしておく方が、上振れに関しては、そのまま利益になるのでOKという考え方が良いかと思っています。

パン屋の原価率が35〜40%になりやすい理由

パン屋の原価率が飲食店の中でも高めに出るのには、はっきりした理由があります。

  • 小麦粉・バター・卵の価格変動を受けやすい →主原料が数種類に集中しているため、1つ上がると全体に効く。
  • 1点あたりの単価が低い →100円台から200円台の商品が多く、原価の絶対額が小さいぶん、率としては動きやすい。
  • 廃棄が出やすい →当日中に売り切る前提の商品が多く、作った数と売れた数の差がそのまま原価率に乗る

マネーフォワードの「パン屋を経営するには?」でも、パン屋の原材料費は全体コストの約30〜40%を占め、人件費と固定費で50%前後になるのが一般的だとしています。

つまり、原材料費と人件費・固定費を足すと、それだけで80%台に届く構造だということです。

残る利益が薄い業態であることは、前提として持っておいたほうがいいと思います。

パン屋のFL比率が65%を超えると、利益は残らなくなる

パン屋 経営 利益率

ここからが本題です。原価率だけを見ていると、パン屋の経営で利益率が落ちている本当の原因を取り逃がします。

FL比率の計算式と、パン屋の適正水準

FL比率は、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計が売上に占める割合です。

FL比率 =(食材費 + 人件費)÷ 売上高 × 100

飲食店のコスト管理を解説している「FL比率とは|飲食店コストコントロールの最重要指標」では、業態に関わらずFL比率60〜65%、家賃を加えたFLR比率で70%が健全性の目安だとしています。

この2つの数字を、さっきのパン屋の平均と並べてみてください。

  • 材料原価率:30〜40%
  • FL比率の目安:60〜65%

原価率が40%なら、人件費率は25%以内に収めないと目安を超えます。

パン屋は製造工程を店内に持つ業態なので、人件費率25%は決して緩い数字ではありません。

ここが、パン屋の経営が難しくなりやすい構造的な理由です。

パン屋の人件費率と原価率は、同時に上がる

そしてやっかいなのは、この2つが別々に動かないことです。

原材料が値上がりする局面では、たいてい人件費も上がっています。

最低賃金の改定と物価高騰は同じ時期に来ます。

片方だけを見て「原価が上がったから原価を削ろう」と動くと、もう片方が伸びていることに気づけません。

自分がまさにそれをやりました。

原価率の表ばかり見て、人件費率の表を隣に置いていなかった。

数字は毎月見ていたのに、別々に見ていたので構造が見えていませんでした

実例|パン屋の経営で利益率を戻した2年間の記録(FL69.1%→61.5%)

パン屋 経営 利益率

ここから自分の店の実数です。大阪門真店の年平均で、次のように動きました。

指標 2024年
(最悪期)
2026年
仕入率(F) 30.3% 30.1%
人件費率(L) 38.8% 31.5%
FL計 69.1% 61.5%

FL比率は7.6ポイント改善しました。ただ、この表で見てほしいのは改善幅そのものではありません。

パン屋の原価率は業界平均より低いのに、利益が残らなかった

仕入率30.3%。 業界の中央値帯が35〜40%ですから、悪くない数字です。

当時の自分も、原価率については問題意識を持っていませんでした。

それなのに、利益は残っていませんでした。FL比率が69.1%。目安の60〜65%を大きく超えています。

人件費率が38.8%まで上がっていたからです。

月別に見ると、2024年7月は42.3%、9月は43.9%と、40%台の月が続いていました。

なぜこうなったか。インフレを見通せないまま、デフレ前提の価格設定を続けたからです。

原材料が上がり続けているのに、売価を据え置いていました。

「安さで選ばれている」という思い込みがあって、値上げの判断を先送りしていたんです。

売価が動かないまま原価が上がれば、原価率は上がります。

それでも30%台前半で踏みとどまっていたのは、製造側で相当無理をしていたからで、その無理は人件費に出ていました。

原価率を守るために人を使っていた、という言い方が正確かもしれません。

原価率だけを見ていたら、この構造には一生気づけませんでした。

パン屋の人件費率を7.3ポイント下げた|原価率は横ばい

戻した結果を、もう一度見てください。

  • 仕入率:30.3% → 30.1%(ほぼ横ばい
  • 人件費率:38.8% → 31.5%(7.3ポイント改善

改善はほぼ全額が人件費側でした。 原価率は動いていません。

やったことは4つです。

  1. 時間帯・工程ごとの人の置き方を見直したこと。
  2. 業務効率化を一度きりで終わらせず継続的に回したこと。
  3. 集客が安定して必要人員を読めるようになったこと。
  4. 過去データの分析精度が上がって、作りすぎと人の余りが減ったこと。

この4つの中身は、この記事で書くと長くなりすぎますので、

人件費側の具体的な手順は飲食店の人件費削減|FL比率を7.6ポイント下げた実例で解説に。

原価率側の考え方は飲食店の原価率を下げる方法|30%の壁を「下げずに」超えた実例に。

それぞれまとめてありますので、合わせて読んでいただき、参考にして下さい。

ここで押さえてほしいのは1点だけです。

利益率が戻った原因は、原価率ではなく人件費率にあったという事です。

原価率の表だけを見ていたら、2年かかっても気づけなかったと思います。

利益率を戻すまでに何をどの順番でやったか、週ごとの判断も含めた詳しいプロセスは、有料note「店舗集客の教科書」にまとめていますので、こちらも参考にして下さい。

パン屋が儲かる状態を保つには、週1回数字を見るしかない

パン屋 経営 利益率

数字が戻ったあとに分かったのは、戻すことより保つことのほうが難しいということでした。

放っておくと、また元に戻ります。

売上とシフト時間を並べて、パン屋の利益率を毎週確認する

いま自分がやっているのは、週に1回、数字を並べて見ることだけです。

見ているのは、売上、客数、客単価、原価率、人時生産性。そして売上と、そこに使ったシフト時間を、いつも並べて置きます

以前は売上だけを追っていました。

前年より売れた週は良い週だと思っていた。でも、売上が増えていても勤務時間がそれ以上に増えていれば、利益は残りません。

逆に売上が横ばいでも時間が減っていれば、その週の中身は良くなっています。

  • 売上は伸びたのに、時間がそれ以上伸びた週 → その伸ばし方は続かない
  • 売上が落ちたのに、時間が落ちていない週 → 対応が遅れている
  • 売上も時間も落ちた週 → 中身としては悪くない場合がある

この判断は、2つを並べて記録するまでできませんでした。

月次の試算表を見ているだけでは、月が終わってから気づくことになりますが、週1回なら、翌週で直せます。

天候の記録が、パン屋の利益率の読みを変える

もう1つ、毎朝記録しているものがあります。前日の最低気温と天気です。

パン屋の客数は天候ではっきり動きます。

これを残しておくと、「今週は数字が悪かった」と言うときに、雨が続いたからなのか、それ以外に理由があるのかを後から切り分けられます。

切り分けられれば、打つ手が変わりますので、天候のせいなら仕込み量の調整の話ですし、そうでないなら別の理由を探す話になります。

このデータを毎日入れているパン屋はあまりないと個人的には思っていますが、始めるコストはほぼゼロですから、やらない理由が無いです。

参考に示しますが、業種別のより公的な経営指標を確認したい場合は、日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」が業種別・従業者規模別のデータを公開しています。

隔年調査なので、最新版を確認してみてください。

まとめ|パン屋の利益率は「原価率×人件費率」で見る

この記事の要点を整理します。

  • パン屋の純利益率の目安は5~15%、材料原価率は30〜40%(業界平均)
  • FL比率の健全性の目安は60〜65%。原価率が40%なら人件費率は25%以内
  • 自店は原価率30.3%と業界平均より低かったのに、FL比率69.1%で利益が残らなかった
  • 戻したのは人件費率(38.8%→31.5%)。原価率は横ばいのまま
  • 保つには、週1回、売上とシフト時間を並べて見るしかない

いちばん伝えたいのは3つ目です。原価率が良くても、利益が残らない店はあります。

原価率だけを指標にしていると、この状態を発見できません。

今日からできることを挙げておきます。

  • 直近3か月の原価率と人件費率を足して、FL比率を出す
  • 60〜65%の目安に対して、いまどこにいるかを確認する
  • 超えている場合、原価と人件費のどちら側が押し上げているかを見る
  • 週1回、売上とシフト時間を並べて記録する時間を決める
  • 前日の天気と最低気温を、記録項目に足す

FL比率を出すだけなら、手元の数字で今日からできます。

そこで初めて、自分の店が業界平均のどのあたりにいるのかが分かりますので、始めてみてはいかがでしょうか?


Warning: Undefined variable $comment_form_sns_tags in /home/gud2015/future-anxiolytic.com/public_html/wp-content/themes/shaper/comments.php on line 27

2件のコメントがあります

Comments are closed.