飲食店のシフトの組み方|人時生産性を基準にした手順

飲食店 シフト 組み方

シフトを組むのに毎月まとまった時間を取られている。

それなのに営業が始まると、忙しい時間帯に人が足りず、暇な時間帯に人が余っている。パン屋を2店舗まわしている自分も、しばらくこの状態でした。

原因は、シフトを「集まった希望を並べる作業」として組んでいたことでした。

誰がいつ入れるかから考え始めると、店に必要な人数ではなく、集まった人数でシフトができあがります。

先に結論を書きます。

シフトは「人から」ではなく「時間帯の仕事量から」組む、そして組んだら終わりにせず、毎週売上と一緒に見て直す。

この記事では、飲食店のシフトの組み方を、必要人数の決め方から週次の見直しまで、自分の店で続けている手順として書きます。

飲食店のシフトの組み方は「人」ではなく「時間帯の仕事量」から始める

飲食店 シフト 組み方

飲食店のシフトの組み方でつまずく人の多くは、希望シフトの回収から始めています。

希望を集める前に、店として必要な人数と時間を先に決めておく

希望が先だと「集まった駒をどう並べるか」というパズルになりますが、必要人数が先にあれば「この時間帯はあと1人足りないので相談する」という交渉になります。

時間帯別の人員配置は、売上ではなく仕事量から決める

必要人数は、売上ではなく仕事量から出します。

売上から人数を出そうとすると「売れる日は忙しい」という当たり前の結論にしかならず、何時に何人置くかが決まりません。

自分の店では、1日を仕事の中身で区切っています。

  • 開店前:仕込みと焼成。売上はゼロだが、人はいちばん必要な時間帯
  • 朝〜昼:来店が集中する。レジと品出しに人を割く
  • 昼過ぎ〜夕方:来店が落ちる。補充と清掃、翌日の準備に切り替わる
  • 閉店前:片付けと締め作業

この区切りごとに「この作業を回すのに何人いるか」を書き出します。

パン屋なら焼成は人数を減らせない一方、夕方の販売は1人で回る時間帯があります。

ここで大事なのは、売上が立たない時間帯にも人が要ると認めることです。

開店前を軽く見積もると、開店直後に商品が並ばず、ピークの売上そのものを落とします。人件費を削るつもりが売上を削っていた、という失敗はここから起きます。

繁忙・閑散の波は、記録しないと人員配置に反映できない

必要人数を決めるには、いつが忙しいかを知っている必要があります。

感覚でも大づかみには分かりますが、感覚は「印象に残った日」に引きずられます。行列ができた日は覚えていて、静かに終わった日は忘れます。

自分は毎週、売上・客数・客単価・原価率・人時生産性に加えて、前日の最低気温と天気をスプレッドシートに記録しています。

パン屋の客数は天候ではっきり動くからです。

記録が積み上がると、平日と土日でピークの時間帯がずれること、雨の日の落ち幅が時間帯によって違うことが見えてきます。

「土曜の10時台は平日より1人多く」という判断に、勘ではなく根拠を持てるようになります。

最初から全部を記録する必要はありません。日付・売上・客数・その日のシフト合計時間、この4つだけでも1か月続ければ波は見えます。

飲食店のシフト表の作り方|希望は必要人数を決めたあとに集める

必要人数が決まったら、シフト表の作り方は「決めた枠を埋める」作業になります。

ここで初めて希望を集めます。

シフト希望は「入れない日」を書いてもらうと調整しやすい

希望の回収でよくある失敗は、締め切りを決めていない、決めていても守られていない、というものです。

1人の提出が遅れるとシフト全体が動かせず、作成が数日単位で後ろにずれます。

自分の店で決めているのは3つです。

  1. 締め切りを固定する(毎月同じ日。覚えてもらうため日にちは動かさない)
  2. 提出先を1か所にする(口頭とメッセージが混在すると、聞いた聞いていないが起きる)
  3. 「入れない日」を書いてもらう(入れる日を書いてもらうより漏れが少ない)

3つ目は地味ですが効きます。

「入れる日」を書く形式だと多くの人は控えめに書きますが、「入れない日」なら、書かれていない日は相談できる日になります。

回収したら、先に決めた枠に当てはめて、埋まらない枠を洗い出します

締め切り直後に相談を始められるので、作りきってから足りないと気づくのとでは数日の差が出ます。

人員配置のコツは、ピークに未経験者を固めないこと

人数が足りているのに現場が回らない日は、たいてい経験の配分が偏っています。

意識しているのは2点です。

  • ピークに未経験者を固めない。判断が必要な時間帯に、判断できる人を置く
  • 教える時間は閑散帯に寄せる。ピークに教えようとすると教える側の手も止まり、2人分の生産性が落ちる

未経験者を早く育てたい気持ちから、忙しい時間に入れて実地で覚えてもらう組み方をしたことがあります。

結果は逆で、教える側が作業を中断し続け、その時間帯だけ回らなくなりました。育成は余裕がある時間帯に置いたほうが早いというのが実感です。

人時生産性をシフト作成の基準にする|使える総労働時間を逆算する

飲食店 シフト 組み方

必要人数と経験の配分が決まったら、最後に総量が適正かを確かめます。ここで使う基準が人時生産性です。

計算式より先に、自店の人時生産性の基準値を1つ決める

人時生産性は、売上(または粗利益)を総労働時間で割った数字です。

計算式の立て方や目標値の決め方は人時生産性の計算方法|飲食店の改善手順を解説にまとめてあるので、ここでは繰り返しません。

シフトを組む場面で要るのは、計算式そのものではなく自店の基準値を1つ持っておくことです。

基準がないと、組んだシフトが多いのか少ないのか判断できません。

自分の店では人時生産性4,000円以上を目安に置いていますが、業態が違えば水準も変わります。自店の過去数か月の実績から出した平均を、まず基準にするのが現実的です。

売上見込み ÷ 人時生産性で、シフト表に使える総労働時間が出る

基準値があれば、シフト作成に1工程足すだけで使えます。

  1. その日(またはその週)の売上見込みを立てる
  2. 売上見込み ÷ 人時生産性の基準値 = 使える総労働時間
  3. その総労働時間を、先に決めた時間帯別の必要人数に配分する
  4. 収まらなければ、どの時間帯を削るかを決める

1日の売上見込みが20万円で基準が4,000円なら、使える総労働時間は50時間です。組んだシフトの合計が60時間なら、10時間分どこかが多いことになります。

大事なのは4番です。総量が超えたときに、全時間帯から均等に削らない

均等に削るといちばん売れる時間帯の人が減り、売上が落ちて、結局人時生産性も上がりません。

削るなら、客数が落ちる時間帯から削ります。この逆算を曜日ごとにやっておけば、「土曜は多くても構わない」「火曜は抑える」が数字で決まります。

ここまでのやり方を、日々の記録の付け方からもう一段細かく解説したものを、有料note「店舗集客の教科書」にまとめています。

飲食店のシフトを週次で見直す|売上と実労働時間を並べて確認する

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ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。シフトは組んだ時点では仮説でしかありません。実際に回してみて初めて、多かったか少なかったかが分かります。

売上だけを見ていると、人件費の調整を誤る

やり方を変えて効果が大きかったのは、売上だけを見るのをやめたことでした。

売上だけを追っていた頃は、前年より売れた週が良い週でした。

でも売上が増えていても勤務時間がそれ以上に増えていれば、利益は残りません。

そこで週次の記録に売上とシフトの合計時間を並べて置くようにしました。並べると、売上の増減だけでは見えないことが出てきます。

  • 売上は伸びたのに時間がそれ以上伸びた週 → その伸ばし方は続かない
  • 売上が落ちたのに時間が落ちていない週 → 見込みが外れた日の対応が遅れている
  • 売上も時間も落ちた週 → 中身としては悪くない場合がある

「売上が増えても勤務時間が増えれば利益は残らない」という当たり前の判断が、並べて記録するまで自分はできていませんでした。

なお、実際の勤務時間を記録すること自体は、店の管理の都合というより使用者の責務にあたります。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定)は、始業・終業時刻を確認・記録する原則的な方法として、使用者が自ら現認する方法と、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録による方法を挙げています。

自己申告に頼る場合は、実態に合った記録がされるよう説明などの措置が求められます。

見直しに使うのは、この実労働時間です。

予定していたシフト時間ではなく、実際に働いた時間で見る。ここがずれていると、いくら見比べても手応えのある結論は出ません。

見直しは週1回に固定|シフト管理を効率化する3つの確認項目

見直しは週1回に固定しています。月1回だと外れたシフトを1か月続けることになり、毎日だと1日の振れ幅に振り回されます。

1週間は、曜日の波が1周して、かつ手遅れにならない長さです。

見るのは3つだけです。

  1. 今週の売上と実労働時間(先週・前年同週と並べる)
  2. 人時生産性が基準から外れた日
  3. 現場から出た「多かった・足りなかった」の声

3番を入れているのは、数字だけでは理由が分からないからです。

人時生産性が下がった日が、来客が少なかっただけなのか、機械のトラブルで手が止まったのかは数字を見ても分かりません。

直すのは翌週分だけで構いません。1回で完成させようとしないことが、続けるコツでした。

飲食店のシフトを組むときによくある2つの失敗と直し方

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最後に、自分がやってきた失敗と直し方を書きます。

繁忙時と閑散時に同じ人員配置をしてしまう

いちばん多い失敗です。「この日は3人」と日単位で決めてしまい、朝から夕方まで同じ3人が入っている状態、忙しい時間帯は足りず、暇な時間帯は余ります。

同じ人件費をかけているのに、どちらの時間帯も適正になりません。

直し方は単純で、日単位ではなく時間帯単位でシフトを切ることです。

  • ピークだけ2時間入る短時間の枠を作る
  • 開店前の仕込みと、その後の販売を別の枠として考える
  • 閉店前の片付けは、営業の枠と分けて人数を決める

短時間の枠は募集しにくくなるのでは、と考えていた時期がありましたが、実際には「2時間だけなら入れる」という人もいます。

長時間の枠しか用意していないと、その層に届きません。

なお、時間帯・工程ごとの人の置き方を見直すこと自体は、人件費率そのものに効きます。

この配置の適正化については飲食店の人件費削減|FL比率を7.6ポイント下げた実例で解説に手順を書いているので、そちらを参照してください。

人員配置の見直しは、一度で終わらせない

もう1つの失敗は、シフトの型を決めたら安心してしまうことです。

一度うまく回る型ができると、翌月以降もコピーしたくなります。

自分もそうでした。ところが商品構成が変わり、来店の波が変わり、スタッフの習熟度が上がると、同じ型が合わなくなります。

合わなくなっているのに型を疑わず、「今月は忙しかった」で片付けていました。

見直しを週1回の作業に組み込んでからは、この放置が起きにくくなりました。

シフトは作る作業ではなく、直し続ける作業だと考えるようになってから、当日の過不足がはっきり減っています。

まとめ|飲食店のシフトの組み方は「順番」で決まる

飲食店のシフトの組み方で変えるべきなのは、テクニックではなく順番でした。希望を集めてから考えるのをやめ、時間帯ごとの仕事量から必要人数を決める。

そのうえで人時生産性で総量を確かめ、毎週売上と実労働時間を並べて直していく。この順番にしてから、作成時間も当日の過不足も減りました。

今日から着手できる形にすると、次のようになります。

  • 1日を仕事の中身で区切り、区切りごとの必要人数を書き出す
  • 日付・売上・客数・シフト合計時間の4項目を、1か月記録する
  • 希望シフトの締め切りと提出先を固定し、「入れない日」を書いてもらう形式に変える
  • 過去数か月の実績から、自店の人時生産性の基準値を1つ決める
  • 売上見込み ÷ 基準値で、使える総労働時間を出してから配分する
  • 週1回、売上と実労働時間を並べて確認する時間を決める
  • 総量を削るときは、均等ではなく客数が落ちる時間帯から削る

全部を同時に始めなくて構いません。記録の4項目から始めれば、1か月後には必要人数の判断材料が手元にできます。

シフトと数字を毎週見ていく具体的なやり方は、有料note「店舗集客の教科書」でさらに詳しく解説しています。