個人事業主、法人で起業するなら税金の種類、対策は事前にシミュレーションしておきましょう!
個人事業主の場合も、法人成りした場合も、起業するにあたって必ず考えることになるのが税金についてです。
支払う税金が増えれば、その分出ていく金額が増えて負担は増します。
きちんと節税して税負担を減らすことは、事業を営むうえで必要不可欠です。
個人事業主として起業するのか、法人設立するのかで払うべき税金の項目が変わるため、納める税額にも違いが生じます。
この記事を読んでいただくことで、起業した際の税金に関する知識が身につくと思います。
もくじ
起業後に発生する税金の種類は?
個人事業主として起業した場合に支払うことになる税金は以下の5種類です。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 源泉所得税
- 消費税
一方、法人設立した際に支払う税金は以下の5種類となります。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 源泉所得税
- 消費税
必ずこれら全ての税金を納めるわけではなく、条件に当てはまれば課税対象とならないことも多いです。
個人事業主あるいは法人を起業した場合において、支払う可能性のある税金の種類に関して、具体的に見ていきましょう。
個人事業主で起業する際に発生する税金
まず個人事業主ですと、収入から経費や各種控除を差し引いた金額がプラスなら所得が発生します。
まず最初に、所得に対して課せられるのが所得税です。
また、この課税所得に対して、住民税も計算されます。
住民税は前年度の所得に応じた金額を納付することになりますので、今年度の収入がゼロの場合でも、前年度に所得が発生していたら納めなければなりません。
もうひとつ、個人事業主ですと個人事業税も徴収されます。
ただし、個人事業税は事業所得が290万円以上とならなければ対象ではないので、小規模な事業ですと払わなくてよいケースも多いです。
その他、事業を営むにあたり従業員を雇っている場合や税理士などを依頼し報酬を支払った場合は、源泉所得税の納付も必要です。
最後に、物販やサービスを提供し収入を得た時に受け取っている消費税も、国に納めることになります。
とはいえ、売上高1,000万円以上の課税事業者でなければ、消費税を納付する義務は生じません。
法人で起業する際に発生する税金
法人として起業する場合、個人事業主と違い所得税は発生しませんが、法人税を納めることになります。
所得税が個人事業に対して課せられるのに対し、法人税は会社など法人の所得にかかるもののため、会社の規模と法人の種類に応じて税額が変わります。
個人事業主における所得は自分自身への給与が含まれている状態ですが、法人ですと法人税が課せられるのは給与を引いた後の額に対してです。
このように給与の扱いが個人事業主と法人で異なるため、税額にも影響が出ます。
また個人事業主として起業する際に、納めた住民税と個人事業税に代わり、法人住民税と法人事業税も発生します。
こちらは、国税ではなく、地方税のため、納付先は地方自治体です。
法人において個人事業主と大きく異なるのは、この3つの税金でしょう。
源泉徴収した際の源泉徴収税と、預かった消費税の納付は個人事業主の場合と基本的に同様ですが、細かな要件に関しては違いがあります。
起業前から税金対策を考えてシミュレーションしておこう
個人事業主と法人では、たとえ売上高が同じであっても納める税金の額が変わります。
一般的に個人事業主から法人成りを検討するボーダーラインは800万円~900万円と言われてはいるものの、それはあくまでもケースバイケースです。
税理士や会計士と顧問契約すれば税金対策において細かくシミュレーションしてもらえますが、自身でも最低限の節税知識を持ち合わせておく方がよいでしょう。
納める税額が変わると利益に影響が出るため、個人事業主と法人でどのくらいの負担が生じるのか把握していきましょう。
個人事業主における税負担の割合は?
個人事業主が払う税金の中でも負担が重いのが、所得税です。
所得税は所得に応じて税額が変わる累進課税で、以下のような税率となっています。
- 課税所得が1,000円から1,949,000円までは5%
- 課税所得が1,950,000円から3,299,000円までは10%
- 課税所得が3,300,000円から6,949,000円までは20%
- 課税所得が6,950,000円から8,999,000円までは23%
- 課税所得が9,000,000円から17,999,000円までは33%
- 課税所得が18,000,000円から39,999,000円までは40%
- 課税所得が40,000,000円以上では45%
このように所得が増えれば増えるほど、所得税負担が重くのしかかります。
住民税はこの課税所得を基に計算し住んでいる地域によって税額が変わってきますが、課税所得に対するおおよそ10%とイメージするとよいでしょう。
個人事業税は事業の区分に応じて税率が異なっており、たとえば物品販売業ですと第1種事業に該当し税率は5%です。
尚前述のように所得290万円以下は、課税対象となりません。
一例としてざっくりとした目安ですが、事業所得が600万円の個人事業主なら所得税が20%、住民税が10%、さらに事業区分によって3%から5%の個人事業税を支払うため、合計して33%から35%の税負担が生じます。
法人設立での税負担の割合は?
ある程度課税所得となる額が増えると所得税と逆転現象が起こり、法人として起業した方が有利になりやすいです。
法人として起業した場合、中小法人ですと法人税の税率は以下のようになります。
- 課税所得800万円以下の金額には15%
- 課税所得800万円超の金額には23.4%(平成30年4月以降事業開始なら23.2%)
また、法人税の他に法人住民税と法人事業税が課せられます。
法人住民税は、法人税割と均等割という2つの算出方法を合算した額となりますが、法人税における12.9%+均等割の7万円がおおよその目安です。
法人事業税は所得によって区分されており、以下のような税率が加算されます。
- 課税所得400万円までの部分が3.4%
- 課税所得400万円超800万円以下の部分は5.1%
- 課税所得800万円超の部分が6.7%
このように法人の場合もさまざまな税負担が生じますが、合算すると所得が1,400万円まではおおよそ30%前後の負担率と言われています。
もちろん実際の所得額や経費の額などさまざまな要因で、個人事業主と法人の起業どちらが税負担を抑えられるか異なります。
節税のために法人化を検討しているなら、細かなシミュレーションや税理士への相談は必須でしょう。
起業後に税金が免除されるケースは?
個人事業主ですと、赤字によって所得がない場合や各種控除によって所得がゼロとなった場合、税金は発生しません。
つまり、全く税金を払わなくて済むパターンは多いにありえます。
一方で法人は赤字であっても法人住民税の均等割はかかるため、税金の支払いが発生します。
よって法人企業後に税金の支払いが完全に免除されるケースはありえません。
ただし要件を満たせば2年間消費税が免除となるため、負担を軽くすることは可能です。
個人事業主において税金が免除されるケース
個人事業主で年間を通じて赤字となった場合、所得がゼロですから必然的に所得税が発生しません。
また、住民税も赤字ですと所得割も均等割も基本的には非課税となるため、住民税の納付対象となり得ません。
その他、個人事業税及び消費税の支払い義務も生じないので、支払う税金はゼロです。
たとえ所得が発生しても、前3年の赤字による繰越控除があり相殺してゼロとなる時も、上記パターンと同様に非課税となります。
ただし繰越控除ができるのは確定申告により青色申告をした場合のみです。
もう1つ、所得があってもそれ以上に控除による差し引きが大きいと税金がゼロとなることもありえます。
各種控除を使い所得がゼロとなれば税金は発生しませんが、控除の金額が所得税と住民税で異なるため、所得税が発生しなくても住民税は支払わなければいけないケースは考えられるでしょう。
均等割が非課税となる設定額は自治体により異なることから、場合によっては均等割のみ支払いが生じる可能性はあります。
法人の場合赤字でも均等割は免除されない
赤字ですと支払う税金が完全に免除される個人事業主とは異なり、法人の場合は赤字でも法人住民税の均等割が発生します。
均等割は所得に対してかかるものではないからです。
法人が所在していることにより、行政サービスなどの恩恵を受けていることに対する課税です。
そのため収益を上げていても、逆に上げていなくても、均等割の部分は支払わなければなりません。
その額としては最低の場合でおおよそ7万円程度です。
法人化することで消費税が2年間免除となる
消費税は、基本的に前々年度の課税売上高が1,000万円以上発生した場合に納める必要のある税金です。
つまり個人事業主及び法人どちらでも、多くの場合において事業開始から3年目までは免除となります。
よってこのタイミングで法人化すれば、さらに消費税の支払いを2年間先送りにすることが可能です。
実質的に2年間消費税が免除されることとなるため、大きな節税効果を得られます。
個人事業主、法人で起業するなら税金の種類、対策 まとめ
個人事業主でも法人でも、起業すると各種税金が課せられます。
何の節税対策もおこなわないと、せっかく多くの売上を稼いでも税金へと消えてしまいます。
支払うべき税金はたくさんあるため、一つ一つの税金における理解を深めましょう。
ある一定の所得を超えると法人成りした方が税制面において有利になることが多々あります。
節税効果を高めたい場合にはメリットが多いですから、視野にいれつつシミュレーションなどをしっかりとおこないましょう。