サーバントリーダーの意味とは何?サーバントリーダーシップの事例や特徴をまとめました
「サーバント・リーダーシップ」と呼ばれる新しいリーダー像が、「支配型のリーダー」と比較対象として挙げられる事があります。
サーバント(奉仕型)リーダーとは具体的に何をするのか?
支配型リーダーとの対比や意味、特徴、具体的な事例をまとめました。
この記事を読む事で、サーバント(奉仕型)リーダー像を理解し、あなた自信がサーバントリーダーとして活躍し、部下を惹きつける、魅力的なリーダーへと成長するヒントを掴む事が出来ます。
ブログの内容を動画にまとめました。
もくじ
サーバント(奉仕型)リーダーとは?意味を解説
一言でリーダーと言っても、それぞれのタイプがありますが、大きく分けると
- ワンマンタイプ
- 放任主義
- 民主型
- 奉仕、支援型
のリーダー像が挙げられますが、この中で奉仕、支援型のリーダーの事を「サーバント(奉仕型)リーダー」と呼ばれています。
サーバントリーダーは、1970年アメリカのロバート・K・グリーンリーフが提唱した
「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」
というリーダーシップ哲学に基づいて考えられたリーダーシップ論です。
支配型リーダーとサーバントリーダーの違い
ワンマンタイプだったり、自己中心的な考え方をするリーダーシップの事をサーバントリーダーと対比して「支配型リーダー」と呼ばれますが、支配型リーダーとサーバントリーダーの違いを挙げると以下のようなイメージです。
支配型リーダー | サーバントリーダー | |
目標 | 自分の地位を上げる | 地位ではなく、部下やメンバーへ奉仕 |
組織を動かす方法 | メンバーを支配する | メンバーに協力を仰ぐ |
コミュニケーションの取り方 | 相手に指示、命令し動かそうとする。 | 傾聴やクリアリングで意見を聴き、相手の心を汲む |
仕事での利益の上げ方 | 自分の利益のために立ち回る。 自分の能力を前面に出し、自分を中心にした指示で利益を上げる。 |
コーチング、メンタリングで、部下に気づきを与えて、部下と共に動き、成果を上げる。 |
成功 | 自分のもの | チームのもの |
失敗 | 失敗した人に押し付ける。 | 責任を明確にし、失敗をフィードバックし、学ぶ。 |
サーバント(奉仕型)リーダーの意味
支配型リーダーとの違いを理解したところで、サーバントリーダーについて、もう少し深堀りして理解を深めていきましょう。
サーバントとは、日本語訳すると「奉仕者」、「使用人」、「召使い」といった意味合いになります。
人間は本来持っている「奉仕」という感情を上手に使う事で、部下やメンバーからの信頼を勝ち取るマネジメントのため、メンバー個々の成長や目標達成へのモチベーション作りが目的となります。
そのため、成功した手柄は自分のものではなく、メンバー全員のものとし、共に喜びを共有しますし、失敗した場合でも、責任を明確にするものの、失敗から共に学ぶ姿勢を取ります。
ただし、「奉仕」となると、召使いや使用人と訳されるので、
「部下の主張を何でも聞き入れる」
「部下の言いなりになる」
といった、いわゆるご都合の良いリーダーを想像しやすいですが、これは大きな間違いで、リーダーが示す明確なビジョン、ミッションを一種の集合体のように取り組み達成する事こそ、サーバント(奉仕型)リーダーの役割です。
サーバント(奉仕型)リーダー10の特徴
サーバント(奉仕型)リーダーの意味を理解したところで、ここからはサーバントリーダーの10個の特徴について、まとめていきます。
サーバントリーダーの特徴その1 傾聴(Listening)
サーバントリーダーに求められるスキルの一つが「傾聴」です。NLP(神経言語プログラミング)と呼ばれるアメリカの心理学では「アクティブリスニング」とも呼ばれる技法ですが、相手の話をしっかりと聴く事です。
「聴く」という漢字は見てのとおり、
「耳」を使って、「十」分に「目」も使って、「心」で聴く
ので、一般的に使われる「聞く」という漢字とは違う漢字で使われます。
部下やメンバーは、常に自分の話を聴いてほしいと思っています、相手の心を開くには、まずは相手の心を受け入れるために十分に話を聴いてあげる事が大切です。
サーバントリーダーの特徴その2 共感(Empathy)
受容や共感とは、相手の存在自体、または相手の主義や主張、感情を受け入れ理解しようとする心構えの事を言います。
相手の気持ちや価値観を受け入れてあげて、感情移入する事が出来るのもリーダシップの一つですので、相手の立場に立って考えるスタンスを取りましょう。
サーバントリーダーの特徴その3 癒やし(Healing)
支配型リーダーは、プレッシャーをかける事で部下やメンバーを動かしたり、成果を出させていましたが、サーバントリーダーは親しみやすい、近づきやすいため、悩み不安を癒やし、自信を取り戻させてあげます。
サーバントリーダーの器があれば、部下やメンバーが迷った時には、すぐに相談してくれるようになり、結果的に問題解決までのスピードを上げる事にも繋がるはずです。
サーバントリーダの特徴その4 気づき(Awareness)
コーチングやメンタリングでよく耳にするのが「気づきを与える」という事です。
自分の先入観や思い込みに囚われず、観察力と質問力を高める事で、部下やメンバーに気づきを与えていく事もサーバントリーダーの特徴です。
質問力を上げるには、
- オープンクエスチョン(拡大型、展開型)
- クローズクエスチョン(限定型、特定型)
と呼ばれる質問方法を効果的に使い分けるのがオススメです。
オープンクエスチョンは、「相手の考え方を理解するのに効果的」
クローズクエスチョンは、「内容を確認するのに効果的」
と言われていますが、質問を通して、部下やメンバーが自分自身で気づきを得ていく事も、十分に可能です。
サーバントリーダーの特徴その5 説得(Persuasion)
奉仕型のリーダーといっても、部下の言いなりになるわけではありませんので、相手の話をしっかりと聴き、自分の考えを伝え、時には相手を納得させなければいけない事もあります。
その時に、相手を強引に説得したり、納得していないまま指示や命令を出しても、モチベーションも上がらないので、サーバントリーダーとしては失格です。
部下やメンバーに納得してもらうには、ビジョンやミッションを共有し、相手の感情と心を汲んだ上で、納得感を得てもらえるように説得していく必要があります。
サーバントリーダーの特徴その6 概念化(Conceptualization)
具体的な内容を体系化し、わかりやすく伝える事を「概念化」といいますが、プロジェクトやタスク、ビジョン、ミッションをわかりやすく部下やメンバーに伝える事も、サーバントリーダーの能力です。
サーバントリーダーには、マクロとミクロの両方で物事を俯瞰し、それぞれの状況に合わせて、部下やメンバーに伝えていく事が求められます。
サーバントリーダーの特徴その7 先見力(Foresight)
リーダーたるもの、短期、中期、長期の視点で物事を見ていく必要があります。
現代は、インターネットの普及もあり、世の中の進化スピードがどんどんと速くなっていますので、状況を見極めたり、新しい情報にもアンテナを張っておく必要があります。
サーバントリーダーは、固定観念を持たず、あらゆる分野の情報を手に入れ、時には融合させたり、個別に分けて見ていきながら、良いものを取り入れていきましょう。
サーバントリーダーの特徴その8 執事役(Stewardship)
サーバントリーダーは、献身的な態度で部下やメンバーに接し、メンバー全体の利益を中心に物事の考えを進めますが、どちらかと言えばチームで黒子役に徹し、メンバーを進むべき方向へと上手く操縦して進めていきます。
サーバントリーダーから献身的なサポートを得た部下やメンバーは、モチベーションを高めて、信頼関係がより深まっていきますので、部下やメンバーの能力を引き出したり、長所を活かしやすく育成が進みやすくなるでしょう。
サーバントリーダの特徴その9 人々の成長への関与(Commitment to the Growth of people)
サーバントリーダーは、結果も重視しますが、結果に至るまでの過程も重視し、部下やメンバーの成長を促すよう行動します。
組織をより成長させていくには、一人ひとりが成長する事が求められ、リーダーがメンバーの成長を促すようなアドバイスや献身的な支援を行っていく必要があります。
部下やメンバーのメンタル面のサポートも行う事で、組織の安定感だったり、トラブル回避を図る事が出来るのも、サーバントリーダーの力によって可能になります。
サーバントリーダの特徴その10 コミュニティづくり(Building community)
サーバントリーダーは、お互いを助け合うコミュニティを築く力を持っています。
メンバーの長所、特徴をしっかりと把握し、お互いを尊重しあい相乗効果を生み出せる環境づくりをしていく事になります。
リーダー自ら部下やメンバーに対して奉仕する姿勢を見る事が出来ますので、メンバーにも伝播し、困ったメンバーには手を差し伸べていきます。
組織の中でフレキシブルな対応をとり、目標やタスク別にワークグループを行うのも効果的でしょうし、リーダーが信頼感を勝ち取れば、メンバー同士打ち解けやすくなります。
サーバントリーダーシップのデメリット
サーバント・リーダーシップは、理想のリーダーシップ像に見えますが、取り入れた組織で起こった2つのデメリットがありました。
サーバントリーダーシップのデメリットは、
- 組織の方向性を示す難しさ
- 脱落するメンバーが出てくる
です。
サーバントリーダーシップのデメリットその1 組織の方向性
サーバントリーダーは、部下やメンバーとの対話を重視しますので、支配型リーダーに比べると「時間がかかる」事が問題点です。
一人ひとりの時間をかけると、多くのメンバーがいる場合は、時間をかけてしまうと、組織の方向性が調整しにくくなってきます。
サーバントリーダーシップのデメリットその2 メンバー
サーバントリーダーは、部下やメンバーに気づきを与える事を重視し、解決方法を導いていきますが、自分で考えるのが苦手だったり、経験値が低い時は「面倒だ」と思われてしまい、脱落する事もあります。
メンバーの自主性を尊重するために、成長したいと望むメンバーで構成されていなければ、組織内で脱落者が続出しかねませんので、注意が必要です。
サーバントリーダーシップは古い??
サーバントリーダーシップで検索すると、「古い」と出てきますので、今求められるリーダーシップに新しい姿があるのか?興味がありましたので、検索してみたところ・・
「支配型リーダーシップが古い」
であって、サーバントリーダーシップが古いわけではありませんでした。
前述の通り、サーバントリーダーの考え方は1970年に生まれていますが、その後もサーバント型のリーダーシップは色褪せる事はありません。
むしろ、導入している企業や団体も増えている現状ですので、この次にサーバントリーダーとして有名な著名人や企業の事例をまとめていきます。
サーバントリーダーは上司の負担が大きい
従来の支配型リーダーやワンマンタイプであれば、部下やメンバーが結果を出さない時に、自分自身が進めていき、強引に結果へと導くことも出来ました。
相手を動かす必要がなく、自分勝手に出来るので、ある意味楽なリーダーシップです。
一方で、サーバントリーダーは常に部下やメンバーと関わりも増える上、目標自体は変わらないので、部下やメンバーの意識を高める工夫が必要です。
サーバントリーダーは、支配型リーダーに比べて古い考え方ではなく、ヒエラルキーを排除しながら、自分の感情を抑制し、高い目標を掲げ達成を目指す、とても難しいミッションをこなさなければいけないです。
サーバント(奉仕型)リーダーシップの有名人
サーバントリーダーとしてリーダーシップを発揮している著名人で有名なのが、大学駅伝の青学大を率いる原晋監督です。
原監督は、
「4度目の優勝だったが、1回目の初優勝した時は私自身が、君臨型でやってきたが、今はサーバント型で選手自身が自分自身の気持ちで頑張ってくれた。」
と、自身の事をサーバントリーダーだとコメントしました。
そして、もうひとりの有名人がNPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会を創った真田茂人氏です。
株式会社レアリゼの代表取締役として、個人の意識変革を起点とした組織開発を強みにした、講演、研修、トレーニング、コンサルティングを行っていますが、サーバントリーダーの育成にも力を入れています。
サーバント(奉仕型)リーダーシップを取り入れた具体的な事例
サーバントリーダーの有名人の次に、実際に企業に導入した実例をいくつかご紹介します。
サーバントリーダーを導入したスターバックスコーヒー
世界的なコーヒーショップのリーディングカンパニーとも言えるスターバックスコーヒーですが、元社長のハワードビーハー氏は、
- サーバントな文化
- 人を大切にする文化
を原動力とし、スターバックスを世界的な企業へと押し上げたと語っています。
スターバックスでは、今もなおビーハー氏の考えを元に、ストアマネージャーを対象にした「奉仕型リーダー育成セミナー」を行っています。
サーバントリーダーシップを導入した資生堂
資生堂の元社長池田守男氏は、「サーバントリーダーシップ入門」という書籍を執筆した方で、自社にも
- 会社を再建する
- 新しく生まれ変わらせる
使命を持って、サーバントリーダーを育成する組織へと変革しました。
池田氏は、「店頭基点」を念頭にした、顧客を一番上に置いた逆ピラミッド型組織を推進、サーバントリーダーシップの精神を根付かせるのに、ビューティーコンサルタントや営業職の会議に社員自ら参加し、現場の声に耳を傾けたのです。
サーバントリーダーシップを導入した良品計画
無印良品を展開する良品計画の元社長である松井忠三氏は、業績が落ちている最中に社長に就任したため、まずは全国の店舗をほぼ全て回り、店長や現場の話に耳を傾けました。
現場の課題を元に、業務を見える化するための「MUJIGRAM」というマニュアルを作成、スタッフの声を吸い上げるシステムを開発し、業績回復を果たしました。
サーバントリーダー的役割を果たした松井氏は、特に概念化や先見力に優れた方だったのです。
サーバントリーダーシップを導入したダイエー
ダイエーの元社長であるる樋口泰行氏は、自らリーダーシップを発揮し、赤字店舗の閉鎖の説明や御礼周りに時間を費やしました。
社員のモチベーションは、社長のリーダーシップにより高まり、「閉店売りつくしセール」も好影響となり、2 年4 ヶ月ぶりの前年比プラスの売り上げを記録するまでに回復しました。
閉店後も社員のモチベーションは高く、異動先でもスタッフへ伝播し、11ヶ月連続の前年比プラスの売上を達成します。
サーバントリーダーシップを学べる本をアマゾンで紹介
最後に、サーバントリーダーシップをより深く学ぶのに、おすすめの書籍をいくつかご紹介していきます。
サーバント・リーダーシップ入門 金井 壽宏 、池田 守男
資生堂の池田氏が、リーダシップの第一人者金井氏とコラボし、日本初のサーバントリーダーシップ実践、導入に向けて作られた本。
社長が下から社員を支える「逆ピラミッド型」の組織構造を導入した事でも有名な事例を交えての入門書です。
サーバントリーダーシップ ロバート・K・グリーンリーフ
「サーバント」――つまり「奉仕」こそ、リーダーシップの本質である。
ロバート・K・グリーンリーフの考え方を学べる、現代に必要なリーダシップ理論が学べる一冊。
「スピアーズによるサーバントリーダーの属性」の10個の特徴も、本書籍の中で語られています。
サーバントリーダーの意味とは何?サーバントリーダーシップの事例や特徴 まとめ
サーバントリーダーとは、奉仕型リーダーの事ですが、決して部下にへりくだる事もないですし、自分の価値観や意志を曲げて、相手に尽くすという意味ではありません。
むしろ、リーダーが示す道筋に共感を得られるように、相手の価値観や考え方を受け入れて、時には話し合ったり、コミュニケーションを取る事が求められる、重要な役割です。
サーバントリーダーは、組織を目指すべき方向へ舵取りをするのに、メンバー一人ひとりの意識を高めて、モチベーション高く動かしていく事が出来るリーダーシップを発揮できるリーダーです。
従来の支配型リーダーとは違い、自己中心的な考えやワンマンタイプではなく、うまい調整役として部下とメンバーに立ち回り、時には対外や上司と折り合いながら、高い目標を達成していきます。
サーバントリーダーになると、仕事へのやりがいも大きくなり、組織の一体感を生み、成果をチームで共有することが出来るようになります。
是非とも、サーバントリーダーシップを取り入れ、より良い人間関係を築き、素晴らしい成功を修めて頂きたいと思いますし、そのために当サイトの情報が少しでもお役に立てれば幸いです。