人時生産性の計算方法|飲食店の改善手順を解説
人時生産性を確認したいけれど、「売上を人数で割ればよいのか」「勤務時間をどう数えるのか」「何円なら合格なのか」と迷う店舗経営者は少なくありません。
結論から言うと、店舗で使いやすい人時生産性は、売上高または粗利益を、全スタッフの総労働時間で割って計算します。
人時生産性を一度だけ計算しても、改善にはつながりません。同じ曜日、同じ時間帯、同じ店舗で比較し、売上と総労働時間のどちらに原因があるかを見つけることが大切です。
私は飲食店を運営する中で、売上だけを追うのではなく、シフト時間とのバランスを見るようにしてきました。売上が増えても、必要以上に勤務時間が増えれば利益は残りにくくなります。
逆に、人を減らして人時生産性だけを上げても、接客や製造品質が落ちれば長続きしません。
この記事では、人時生産性の計算方法、目標の決め方、改善手順、シフト表での確認方法を、飲食店の具体例で解説します。
もくじ
人時生産性の計算方法|売上高と粗利益の違い

人時生産性の基本式は、次の通りです。
売上高人時生産性 = 売上高 ÷ 総労働時間
例えば、1日の売上高が18万円、スタッフ全員の総労働時間が36時間なら、人時生産性は5,000円です。
180,000円 ÷ 36時間 = 5,000円
この人時生産性は、「1時間の労働投入で、いくらの売上を作ったか」を示します。日別、曜日別、時間帯別に計算しやすいため、店舗のシフト管理に向いています。
粗利益で人時生産性を計算する方法
売上高だけでなく、粗利益を使って人時生産性を計算する方法もあります。
粗利益人時生産性 = 粗利益 ÷ 総労働時間
先ほどの店舗で原価率が30%なら、粗利益は12万6,000円です。
180,000円 × 70% = 126,000円
126,000円 ÷ 36時間 = 3,500円
売上高人時生産性が同じでも、原価率が違えば、残る粗利益は変わります。商品構成を比較する時は、粗利益による人時生産性も確認すると判断しやすくなります。
労働生産性と人時生産性の違い
国の中小企業白書などでは、労働生産性を「付加価値額を労働投入量で割る指標」として扱います。厳密な経営分析では、付加価値額や従業員数、労働時間を用います。
一方、日々の店舗管理では、売上高や粗利益を使った人時生産性の方が、POSとシフト表からすぐ計算できます。
- 経営全体を見る:付加価値による労働生産性
- 店舗の日々を見る:売上高または粗利益による人時生産性
どちらが正しいという話ではなく、目的が違います。現場改善では人時生産性、決算や企業比較では付加価値による労働生産性というように使い分けます。
総労働時間に含める範囲
人時生産性を比較するには、総労働時間の数え方を毎回そろえます。
飲食店なら、次の時間を含めます。
- 開店前の仕込み
- 営業中の接客、調理、製造
- 閉店後の片づけ
- 店長や社員が現場作業をした時間
- 応援スタッフが店舗作業をした時間
休憩時間を除くか、研修や会議を含めるかも、店内でルールを固定します。月によって数え方が変わると、人時生産性の増減が本当の改善なのか分からなくなります。
人時生産性の目標値|飲食店は何円を目指す?

人時生産性に、すべての飲食店へ共通する絶対的な目標値はありません。業態、価格帯、営業時間、セルフサービスかフルサービスか、製造を店内で行うかによって必要な人数が変わるためです。
そのため、人時生産性の目標は、外部の数字をそのまま採用するのではなく、自店の実績から決めます。
人時生産性の目標を決める3段階
- 過去8〜12週間の人時生産性を曜日別に計算する
- 欠品、待ち時間、残業、クレームが少なかった週を探す
- 品質が安定した週の人時生産性を最初の基準にする
例えば、土曜日の人時生産性が次のように推移していたとします。
| 週 | 売上高 | 総労働時間 | 人時生産性 | 現場状況 |
|---|---|---|---|---|
| 1週目 | 160,000円 | 34時間 | 4,706円 | 待ち時間なし |
| 2週目 | 175,000円 | 35時間 | 5,000円 | 品質安定 |
| 3週目 | 180,000円 | 32時間 | 5,625円 | 混雑・クレームあり |
数字だけなら3週目が最も高いですが、接客品質に問題が出ています。最初の目標は、2週目の5,000円前後を基準にし、作業改善によって少しずつ引き上げる方が現実的です。
人時生産性だけを上げる危険性
人時生産性を上げる最も簡単な方法は、シフト時間を削ることです。しかし、必要な人員まで減らすと次の問題が起きます。
- 提供時間が延びる
- 清掃が行き届かない
- 売り切れや欠品が増える
- スタッフが疲弊する
- 再来店率が下がる
人時生産性は、店舗の健康状態を判断する一つの指標です。客数、客単価、待ち時間、廃棄率、残業、口コミなどと一緒に確認します。
人時生産性を上げる方法|売上と総労働時間を分解

人時生産性を改善する時は、いきなり「人を減らす」と考えません。式を分解し、売上高を上げる施策と、総労働時間を最適化する施策に分けます。
売上側から人時生産性を上げる
売上高は、基本的に「客数×客単価」で決まります。
客数を増やす施策:
- 営業時間、場所、駐車場を分かりやすくする
- 人気商品と価格をSNSやGoogleで見せる
- 予約方法を一つに整理する
- 来店後に次回営業日を案内する
客単価を上げる施策:
- セット商品を作る
- 関連商品を一緒に提案する
- 利益率の高い看板商品を育てる
- 3個、5個など選びやすい購入単位を作る
人員を増やさず、同じ時間で客数または客単価が上がれば、人時生産性は改善します。ただし、値上げや追加提案が顧客満足を下げないかも確認します。
総労働時間から人時生産性を上げる
総労働時間の改善は、忙しい時間に必要な人を減らすことではありません。売上につながりにくい待ち時間、重複作業、手戻りを減らします。
具体的には次の方法があります。
- 仕込み量を曜日別の販売実績から決める
- 道具と材料の置き場所を固定する
- 開店前、営業中、閉店後の作業を分ける
- 同じ内容の転記をやめる
- ピーク前に補充と声かけを終える
- 得意作業に合わせて担当を決める
農林水産省は、外食・中食の生産性向上について、商品・サービス力の向上、業務の効率化、従業員のスキル向上という3つの視点を示しています。人時生産性も、この3つを同時に考える必要があります。
人時生産性を改善する優先順位
改善案が多い時は、次の順で選びます。
- お客様への悪影響がない
- 今週から試せる
- 数字を測れる
- 元に戻せる
例えば、「閉店作業のチェックリスト化」は小さく試せます。一方、「ピーク時間の人員を2人減らす」は顧客への影響が大きいため、いきなり実行しません。
人時生産性の改善例|シフト表で毎週確認する

人時生産性は、月末に一度だけ見るより、週単位で同じ条件を比較した方が改善に使えます。
最低限、次の6項目を表にします。
| 日付 | 曜日 | 売上高 | 粗利益 | 総労働時間 | 人時生産性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 7/1 | 水 | 120,000円 | 84,000円 | 28時間 | 4,286円 |
さらに、客数、客単価、廃棄額、待ち時間、天候、イベントの有無を補足すると、人時生産性が変化した理由を追いやすくなります。
人時生産性の改善例1:同じ売上で時間を減らす
改善前:
売上150,000円 ÷ 30時間 = 人時生産性5,000円
改善後:
売上150,000円 ÷ 27時間 = 人時生産性5,556円
仕込み手順や閉店作業を見直し、品質を落とさず3時間短縮できれば、人時生産性は約11%上がります。
人時生産性の改善例2:同じ時間で売上を増やす
改善前:
売上150,000円 ÷ 30時間 = 人時生産性5,000円
改善後:
売上165,000円 ÷ 30時間 = 人時生産性5,500円
セット商品の提案や予約受取の増加によって売上が10%増えれば、人時生産性も10%上がります。
毎週10分の人時生産性ミーティング
毎週の確認は、長い会議にする必要はありません。
- 先週の人時生産性を確認する
- 前週、前年同曜日と比較する
- 上がった・下がった理由を一つ決める
- 次週に試す改善を一つだけ選ぶ
改善を一度に増やすと、どの施策が人時生産性へ影響したか分からなくなります。一週間に一つ試し、再計測する方が確実です。
人時生産性の計算方法まとめ
人時生産性は、売上高または粗利益を総労働時間で割って計算します。
- 売上高人時生産性=売上高÷総労働時間
- 粗利益人時生産性=粗利益÷総労働時間
重要なのは、他店の目標値をそのまま追うことではありません。自店の曜日別・時間帯別の人時生産性を記録し、品質が安定している基準を見つけます。
人時生産性を上げる時も、人を減らすことから始めず、客数、客単価、作業時間、人員配置へ分解してください。記録、比較、一つの改善、再計測を続ければ、売上と働きやすさの両方を整えられます。






