原価率を1%下げるために続けた記録|パン屋2店舗の実際

原価率 記録

原価率の話になると、何をやったんですかと聞かれます。仕入れ先を変えたのか、レシピを見直したのか。分かりやすい一手を期待されているのが伝わってきます。

私の場合、そういう話は出てきません。やってきたのは記録を増やすことと、それを毎週見ることだけでした。

パン屋を2店舗運営しています。この記事では、原価率を1%下げようとして続けてきた記録の中身を、実際の推移とあわせて書きます。

これをやれば下がる、という保証はできません。ただ、何を記録しておくと原価率の動きに早く気づけるかは、4年分の記録から言えます。

原価率のためにやったことは、どれも記録だった

原価率 記録

先に数字を出しておきます。私の店の仕入率の推移です。

仕入率
2023年 30.2%
2024年 30.3%
2025年 29.5%
2026年 30.1%

下がって、また戻っています。きれいな右肩下がりにはなっていません。

2025年に下がった理由を、1つに絞れない

29.5%まで下がった年があります。ただ、これが決め手でしたと言えるものがありません。

値上げの影響もあったはずです。廃棄が減った分もあります。仕入れの見直しもしました。どれがどれだけ効いたのかは、切り分けられていません。

経営者としてはっきりしない答えだと思います。ただ、無理に1つに決めると、翌年それをやっても下がらなかったときに困ります。分からないものは分からないままにしています。

売価を上げれば、原価率は勝手に下がる

もう1つ、先に断っておくことがあります。

原価率は原価を売価で割った数字です。分母が動けば、原価そのものを触らなくても率は動きます。私は主力商品を2回値上げしていて、120円だったものが130円になり、いまは150円です。

客単価も757円から876円まで上がりました。

その間、仕入率は30.2%、30.3%、29.5%、30.1%で、ほぼ横ばいです。

つまり、率の上では下がった年があっても、原価そのものを削れているわけではありません。

ここを混ぜると、値上げの効果を自分の工夫だと勘違いします。率が動いたときは、分子が減ったのか分母が増えたのかを先に見るようにしています。

大きい判断より先に、数字の精度を上げた

仕入れ先の見直しや、商品構成を変えることも考えました。実際に見積もりを取ったこともあります。

やめたのは、そのとき自分が日々の数字を正確に把握できていなかったからです。何が起きているか分からない状態で大きく動かしても、効いたかどうかを判定できません。

先に記録のほうを直すことにしました。順番としては遠回りに見えますが、これ以外の入口が思いつきませんでした。

廃棄の記録を7項目に増やしたら、原価率の見え方が変わった

原価率 廃棄

最初に変えたのは、廃棄の記録の取り方でした。

7項目に増やした

以前は「今日は少し余った」で終わっていました。いまはこの7つを書いています。

  1. 商品名
  2. 製造数
  3. 販売数
  4. 廃棄数
  5. 廃棄原価
  6. 廃棄理由
  7. 売り切れ時間

書く手間は明らかに増えました。閉店後に1つずつ埋めていく作業なので、早く帰りたい日はしんどいです。

記録そのものが原価率を下げるわけではありません。ただ、どの商品が、どんな理由で、何時に余っているかが残るようになりました。

数ではなく金額で並べると、直す順番が変わる

7項目のうち、廃棄原価は最初は入れていませんでした。数を書いておけば足りると思っていたからです。

入れてみて分かったのは、数と金額が一致しないことでした。

安いものが10個残る日と、原価の高いものが3個残る日では、あとに残る損が違います。

数だけを見ていた頃は、残った個数の多い商品から手をつけていました。

金額で並べ替えると、順番が入れ替わります。

個数では下のほうにいた商品が、金額では上に来ることがある。

どちらが正しいという話ではありませんが、金額の列がないと、この見方自体ができません。

数字にして見ていると、発注の感覚が変わる

続けているうちに気づいたのは、発注の量の感覚が変わってきたことでした。

「この商品はいつも同じ時間に売り切れる」「これは毎回少し余る」。感覚として何となく思っていたことが、記録として残る。

すると翌週の仕込み数を決めるときに、迷いが減ります。

劇的な変化ではありません。じわじわとしか変わりませんでした。

廃棄理由の欄がいちばん面倒で、いちばん効いた

7項目のうち、書くのがつらいのは廃棄理由です。

作りすぎ、天候、イベント中止。一言でも書こうとすると、その場で立ち止まって考えることになります。

閉店作業の途中でこれをやるのは、なかなか手が止まります。

一時期、数だけ書いて理由を省いていました。

あとでそのノートを見返したら、なぜ余ったのかがまったく思い出せませんでした。数だけの記録は、あとから使えません。

理由が書いてあると、「作りすぎ」が続いている商品と、「天候」に振り回されている商品を分けて扱えます。

前者は仕込み数の問題で、後者は仕込み数を触っても直りません。

分類も、最初から用意していたわけではありません。始めた頃は「作りすぎ」しかありませんでした。

書いているうちに、どれにも当てはまらないものが出てきて、「天候」「イベント中止」「並べるのが遅れた」と増えていきました。

先に完璧な分類表を作らなくてよかったと思っています。実際に手を動かす前に作った枠は、たいてい現場と合いません。

条件別に売れ方を見るには、先に記録がいる

原価率 記録

もう1つ続けているのが、条件を分けて売れ方を見ることです。平日と土日、晴れと雨、告知した日としない日。この3つで分けています。

同じ土曜でも、天気が違えば別の日になる

毎朝、前日の最低気温と天気を入力しています。これを売上と並べると、同じ曜日でも売れ方がまったく違うことが見えます。

私の店では、雨の日の客数の落ち込みは10%程度です。LINEでプッシュ配信ができる分、天候に振り回されにくい面はあると思っています。

それでも、条件を分けずに「土曜はだいたいこれくらい」でまとめていた頃は、天気の悪い土曜に合わせて仕込みすぎることがよくありました。

同じ土曜という枠で見ていたからです。

平日と土日では、売れる量より売れる商品が違った

平日と土日を分けるのは、当たり前に聞こえると思います。

私も最初は量の話だと思っていました。土曜は多めに作る、それだけです。

記録を分けてみて気づいたのは、量よりも中身のほうが違うことでした。平日の朝に出ていくものと、土曜の昼に動くものは同じではありません。

量だけ増やしていた頃は、土曜に平日と同じ構成で多めに作って、特定の商品だけを残していました。

いまは、量と一緒に何を厚くするかも変えています。

全体の数を絞っても、残るものが残っていては意味がありませんでした。

告知の有無で、仕込み量を変える

告知を出した日と出さない日でも、売れ方は変わります。

以前は同じ量を仕込んでいました。

いまは、告知がない日は少し抑えます。

この判断で廃棄が劇的に減ったわけではありませんが、廃棄記録と突き合わせると、無駄が少しずつ減っているのは分かります。

条件別に見るには、先に記録がたまっている必要がある

条件別に見る、と言うのは簡単です。実際にやろうとすると、比較できるだけの記録がないと始まりません。

晴れの土曜と雨の土曜を比べようとしても、両方が数週間分そろっていなければ、比較になりません。

記録を先に続けていたから、あとになって分けて見られるようになりました。逆の順番では成立しませんでした。

週次の記録が、結局いちばん効いていた

原価率 記録

いろいろやってきた中で、いちばん効いていたのは週次で数字を記録する習慣そのものだったと思います。

毎週見ると、気づくのが早くなる

売上、客数、客単価、原価率、人時生産性。これを毎週書いています。

月末にまとめて見ていた頃は、原価率がじわっと上がり始めていても、1か月分が悪化してから気づいていました。週次にすると、数週間のずれで気づけます。

原価率を1%の単位で扱うなら、この差は小さくありません。

気温を残しておくと、原因を切り分けられる

前日の最低気温と天気を毎朝入れているのは、売上が動いたときに理由を分けるためです。

天候で客数が減って原価率が見かけ上悪化しているのか。客数は変わらないのに原価率だけ上がっているのか。

この2つは、打つ手がまったく違います。前者は放っておいていい日もありますが、後者は仕込みか仕入れのどこかが崩れています。

気温を残していないと、この区別ができません。

原価率だけを見ていた頃は、利益が残らなかった

週次で並べて見るようになったのには、きっかけがあります。

一時期、原価率は30%前後で悪くないのに、利益が残らない状態が続きました。

原因は人件費のほうで、40%近くまで上がっていました。原価率の表しか開いていなかったので、しばらく気づきませんでした。

原価率だけを追っていると、こういう見落としが起きます。いまは人件費率と並べて見るようにしています。

原価率そのものの考え方は飲食店の原価率を下げる方法に、人件費率をどう下げたかは飲食店の人件費削減にまとめました。この記事はその手前で、毎日どう記録しているかの話です。

特別な分析はしていない

週次といっても、やっているのは決まった表に数字を入れて、前の週と比べるだけです。分析と呼べるほどのことはしていません。

忙しい週ほど、これを後回しにしたくなります。実際、数週間分が抜けた時期がありました。

そのあと、原価率が思ったより悪くなっていたことに気づくのが遅れました。

記録が原価率を下げるわけではない。ただ、記録が止まった期間だけ、気づくのも遅れる。それ以来、忙しいときほどここは削らないようにしています。

抜けた分をあとからまとめて書こうとしたこともありますが、うまくいきませんでした。

数字は伝票を見れば戻せます。戻せないのは廃棄理由のほうで、2週間前になぜ余ったのかは思い出せません。まとめて書いた記録は、数字だけの記録と同じものになります。

まとめ|原価率は、記録の外では動かなかった

やってきたのは3つです。廃棄記録を7項目に増やすこと。条件を分けて売れ方を見ること。週次で記録を続けること。

数字は30.2%、30.3%、29.5%、30.1%と動いています。下がって戻る、を繰り返しているだけです。この3つをやれば下がる、とは言えません。

それでも変わったことはあります。悪化に気づくのが早くなりました。

仕込みすぎる日が減りました。原価率が動いたときに、天候のせいなのかそうでないのかを分けて考えられるようになりました。

これから記録を始める人には、最初から7項目そろえなくていいと伝えたいです。

私も最初は数を書くだけでした。必要だと思うたびに項目が増えて、いまの形になっています。廃棄理由の欄は面倒で一度やめましたが、やめている間は何も見えなくなったので戻しました。

原価率は、1つの判断で大きく動く数字ではありませんでした。日々の細かい判断が積み上がって、少しずつしか動きません。特効薬を探している人には、拍子抜けする話だと思います。

ただ、動かないものを毎週見ていると、動いたときにすぐ分かります。それだけのことに、いまは価値があると思っています。

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